Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.580   採集日:2009/01/26   採集地:埼玉県、蓮田市]
[和名:アゼゴケ   学名:Physcomitrium sphaericum]
 
2009年1月29日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 最近、近くの畑や畦道の裸地に、釣鐘型の朔を多数つけた小さなコケが散生していることに気づいた(a〜c)。1月26日に蓮田市の友人を訪問したときに、畑の畦道から少量採取してきた。茎は直立し高さ1〜3mm、上方の葉は大きく、下方では小さい。
 葉は倒卵状披針形〜船形で、長さ1〜2.5mm、葉先は鋭頭、葉縁にはわずかに微歯があるかほぼ全縁で舷はなく、中肋が葉頂に達する(e, f)。葉身細胞は上半では矩形〜六角形で、サイズにはバラつきが大きく、長さ30〜80μm、薄壁で平滑(g, h)、下半から基部ではさらに大きく、透明な細胞もある(i)。葉の横断面で、中肋には中心柱があり、外周を大形細胞がとりまく(j, k)。茎の横断面には弱い中心束があり、外皮は明瞭には分化していない(k, l)。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 朔柄は長さ2〜5mm、帽には長い突起があるが、蓋の突起は短い。朔は釣鐘形ないし洋ナシ形で、朔柄に直立し相称。蓋をとると朔は大きく開口し、朔歯を持たない(m〜o)。朔の縁をよくみると、縁細胞は他の細胞より小さいが、口環の有無ははっきりしない(p)。朔の基部近くには多くの気孔がある(q)。朔柄の横断面も組織分化は弱い(r)。
 
 
 
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
 胞子は球形で、径20〜30μm、表面は疣〜刺に覆われる。胞子が大きいので顕微鏡の合焦位置を少しずつずらしながら見ないと、全体像を把握しにくい。あまり意味はないが、胞子表面(s)から胞子輪郭部(x)まで、すこしずつ合焦位置を下げた映像を並べてみた(s〜x)。

 発生環境、葉のつき方、葉の形、葉身細胞の形と中肋の様子、朔の形などから、ヒョウタンゴケ科 Funariaceae の蘚類だろう。保育社図鑑で検索表をたどると、ツリガネゴケ属 Physcomitrium に落ちる。ついで、属から種への検索表からはアゼゴケ P. sphaericum にたどり着く。種の解説よ読むと、観察結果とほぼ一致する。