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[標本番号:No.577   採集日:2009/01/17   採集地:神奈川県、鎌倉市]
[和名:マキノゴケ?   学名:Makinoa crispata sp.]
 
2009年1月30日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 今月17日、鎌倉のハイキングコースで、切通し状の薄暗く湿った土壁の両側に葉状体の苔類が群生していた(a〜c)。葉状体は不透明な暗緑色、長さ4〜6cm、幅0.8〜1.2cm、匍匐し先端で二叉状に分枝し、中肋部は幅広く、翼部との区画は不明瞭。翼部の縁は波うち、全縁(c, d)。
 葉状体背面の先端付近には、三日月状の窪みがあり、窪みの中には類球形の造精器のようなものが密生している(c, e)。腹面には中肋部にそって褐色の仮根が密生する(f)。腹鱗片の有無と形を確認しようと、密生する仮根を多数取り去ってみたが、腹鱗片はよくわからなかった(g)。葉状体の横断面をみると、中肋部は不明瞭で次第に薄くなって翼部の縁に続き、背面表皮には気室や同化糸などはない(h, i)。表皮細胞以外では葉緑体は極端に少ない。
 葉身細胞はどこも薄壁でトリゴンはなく、表皮細胞は六角形〜多角形で、長さ45〜60μm(j, k)。採取後10日以上も紙袋に放置したままだったせいか、標本はすっかり乾燥してしまい、油体は確認できなかった。仮根は薄膜で平滑なものばかりだった(l)。

 フタマタゴケ目 Metzgeriales の苔類であることは間違いない。この目に属する科のうち、観察結果とまるで異なるものを排除していくと、残るのはマキノゴケ科 Makinoaceae しかないように思えた。採取後の保存方法をしくじって油体を観察できなかったこと、雌包膜を確認できなかったこと、胞子体をつけていないことなどから、これといった決め手を見つけられなかった。平凡社図鑑によれば、日本産のものはマキノゴケ科ではマキノゴケ属 Makinoa だけであり、さらにマキノゴケ M. crispata 1種だけが知られているとされる。
 いずれ胞子体をつけた個体であらためて確認したいと思うが、ここではマキノゴケ?として取り上げておくことにした。まるで自信のない同定結果となった。