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[標本番号:No.582   採集日:2009/02/07   採集地:静岡県、河津町]
[和名:ホウオウゴケ   学名:Fissidens nobilis]
 
2009年2月11日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 伊豆半島南部の河津町、浄蓮の滝へ降りる小径の脇の石やら岩壁にホウオウゴケ科の蘚類が大きな群落を作っていた(a〜c)。周辺は標高300m、日陰で湿気の多いところだ。茎は長さ3〜5cm、30〜50対ほど葉をつけ、葉腋の茎に瘤のようなものはない。
 葉は披針形、葉先は鋭頭、長さ5〜8mm、中肋が葉頂に達する。葉の上部の縁には顕著な歯牙があり、葉上半の縁には小さな歯があり、葉下半の縁は平滑(e〜g)。葉の全周にわたって葉縁の細胞は複数層からなる。乾燥すると葉は軽く縮み反り返るが、強く巻縮することはない。
 葉身細胞は方形〜多角形で、長さ8〜15μm、厚壁で表面は平滑、葉の基部ではやや大きな方形細胞が多い。葉の横断面をみると、背翼では複数細胞厚があり、腹翼は1細胞厚だが先端では2〜3細胞層の厚みがある(i, j)。葉上部の背腹翼が分化していない部分では、葉身部の細胞は2層からなり、葉縁では3〜4細胞の厚みがある(k)。茎は横断面で扁平で中心束がある。

 平凡社図鑑のホウオウゴケ属 Fissidens の検索表をたどってみた。葉身細胞は小さく、葉縁には舷がなく、葉縁の細胞は2細胞層以上の厚みがあり、配偶体は大形、葉先に明瞭で不規則な歯牙があり、葉腋瘤はないから、すんなりとホウオウゴケ F. nobilis に落ちる。ホウオウゴケについての解説を読むと、観察結果とほぼ一致する。