Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.626   採集日:2009/04/19   採集地:茨城県、石岡市]
[和名:ナメリチョウチンゴケ   学名:Mnium lycopodioides]
 
2009年4月24日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(a, b) 小沢の岩についた植物体、(c) 2列についた葉:2種が混成、(d) 採取標本、(e) 湿時、(f) 乾燥時

 筑波山の林道脇の小沢に転がる石や岩に繊細な蘚類がついていた(a)。水際の岩についたものを採集すると2種類が分けがたいほどに入り交じって混成していた(b, c)。実体鏡の下で、混ざり合ったものを分別した。今日はそのうちから、チョウチンゴケ科の蘚類を観察した。乾燥すると、葉が強く巻縮する(d〜f)。水没させても、すぐには葉は開かない。直立する茎は、長さ1.5〜3cm、葉をやや疎らにつける。葉は扁平に2列についたようにみえる。
 
 
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(g, h) 葉、(i) 葉の上半部、(j, k) 葉縁の二重の歯、(l) 葉身細胞、(m) 葉基部の葉身細胞、(n, o) 葉の横断面、(p, q) 茎の横断面

 葉は長卵形〜楕円形で、長さ2.5〜2.8mm、頭部は鋭く、葉中央付近が最も幅広となり、基部は細くなり、茎に延下する(g, h)。葉縁には2〜3細胞列からなる舷があり、上半部には二重の歯牙があり、中肋は葉頂に達する(h〜k)。中肋背面は平滑。
 葉身細胞は類円形〜丸みを帯びた方形ないし多角形で、長径12〜20μm、やや厚角(l)、葉基部では長さ30μmに及ぶ矩形の細胞が並ぶ(m)。いずれも表面は平滑。葉の横断面で、中肋にはガイドセルがあり、背面でステライドがよく発達している(n, o)。茎の横断面には中心束があり、茎の表皮はやや厚壁の小さな細胞からなる(p, q)。

 葉縁に明瞭な舷があり、葉縁には双生の歯牙をもち、丈夫な中肋が葉先に達し、葉身細胞は丸みを帯びた多角形で平滑なことから、チョウチンゴケ属 Mnium に間違いないだろう。平凡社の図鑑の検索表をたどるとナメリチョウチンゴケ M. lycopodioides に落ちる。以前観察した標本No.134と比較すると、葉の付き方が違うが、図鑑に「不稔の茎の葉は離れてついて、2列にみえ」とある。No.134では学名に M. laevinerve を採用していたが、平凡社図鑑や Iwatsuki(2004) にしたがって M. lycopodioides を採用した。これに伴い、No.134 の学名も修正した。