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[標本番号:No.628   採集日:2009/04/19   採集地:茨城県、石岡市]
[和名:アブラゴケ   学名:Hookeria acutifolia]
 
2009年4月26日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 岩隙間の植物体、(b) 朔をつけた植物体、(c) 採取標本、(d) 葉、(e) 葉身細胞:葉先付近、(f) 同左:葉上半部、(g) 同左:葉下半部、(h) 同左:葉基部、(i) 葉の横断面:葉中央、(j) 同左:葉上半部、(k) 茎の横断面、(l) 胞子体

 筑波山の小沢近くの岩の脇にアブラゴケ Hookeria acutifolia が多数群生していた。柔らかい植物体、白緑色の葉を扁平につける、中肋も舷もなく、葉縁は全縁、朔柄は平滑、などからアブラゴケに間違いなさそうだ。保育社図鑑には「長いもので5〜6cm」とあるが、本標本は長いものでも3〜4cmだった。葉身細胞は大きな細長い六角形で、葉の下半部の中央付近で最も大きい。葉の横断面をみると、表面はマミラ状ないし凸レンズ状にふくらんでいる(i, j)。茎の横断面を見ると、組織の分化はほとんどない。今回は胞子体を多数つけていたので、朔歯を中心にじっくりと見ることにした(l)。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(m) 朔、(n) 朔歯、(o) 朔歯の開閉、(p) 内朔歯と外朔歯、(q) 外朔歯、(r) 内朔歯、(s) 外朔歯:基部、(t) 同左:中央部、(u) 同左:先端部、(v) 内朔歯:基部、(w) 同左:中央部、(x) 同左:上半部

 残念ながら蓋をつけた朔や、帽をかぶったものは一つもなく、結果として胞子を観察出来る状態のものもなかった。朔は下垂し、相称。朔歯は二重で、内外の朔歯の長さはほぼ等しく、口環はほとんど観察できなかった。最初に実体鏡の下で、外朔歯と内朔歯を分割した(p)。内朔歯には崩れきった胞子跡が多数ついているが、観察可能なものは見あたらなかった(r)。
 外朔歯は披針形で、下部から中央部には細かい横条が密集し、上部の芒状の部分には小さな乳頭がある。内朔歯は、比較的高い基礎膜の上にあり、間毛などはみあたらない。