Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.694   採集日:2009/07/31   採集地:福島県、福島市]
[和名:イボミズゴケ   学名:Sphagnum papillosum]
 
2009年8月28日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a〜c) 採集標本、(d) 茎と枝、(e) 開出枝と下垂枝、(f) 茎と茎葉、(g) 茎の表皮、(h) 茎の横断面、(i) 枝の表皮、(j) 枝の横断面、(k) 茎葉、(l) 枝葉

 7月31日に採集したミズゴケ類はまだ十数サンプル残っている。そのうちの一つ、標本No.685を観察するため、採集袋から取り出したところ、ボテッとした大型のミズゴケが3本ほど混在していた(a〜c)。そこで、No.685を観察する前に、新たに標本番号No.694を新設し、混成していたものを観察することにした。なお、この日(7/31)撮影した蘚類の現地生態写真は、操作ミスで失ってしまったので掲載できない(「たわごと」→「苦労して撮影した写真が・・・」)。
 ボテッとした枝葉、茎や枝表面の螺旋状肥厚から、ミズゴケ節 Sect. Sphagnum であることは明瞭なので、平凡社図鑑の検索表をたどるのに必要な形質状態に重点を置いて観察結果を記していくことにして、詳細な記述は省略することにした。標本の葉はいずれもやや大きめで、茎葉の長さは1.6〜2.0mm(k)、枝葉の長さは1.5〜2.1mm(l)だった。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(m) 茎葉、(n) 茎葉上半、(o) 茎葉上部、(p) 茎葉中央、(q) 茎葉の縁、(r) 茎葉上部の側面、(s) 枝葉、(t) 枝葉背面上部、(u) 枝葉背面中央、(v) 枝葉腹面上部、(w) 枝葉腹面中央、(x) 枝葉の横断面

 茎葉は舌形で、縁に舷はなくほぼ全周にわたってささくれている(q)。特に上半部の縁は総状に裂けている。茎葉の透明細胞には膜壁があり、葉の大半では糸や孔はないが、部分的に貫通する孔や糸をもっている(o〜r)。
 枝葉は広卵形で深く凹み、先端は僧帽状となり、背面の透明細胞には縁の厚い双子孔や三子孔があり(t, u)、腹面の透明細胞には貫通する孔はない(v, w)。枝葉の横断面で葉緑細胞は楕円形〜樽形で、葉緑細胞と透明細胞の接する部分には微細な乳頭が多数ある(x)。
 
 
 
(y)
(y)
(z)
(z)
(aa)
(aa)
(ab)
(ab)
(ac)
(ac)
(ad)
(ad)
(y, z, aa) 枝葉背面からみた葉緑細胞の壁、(ab) 枝葉縦断面からみた葉緑細胞の壁、(ac, ad) 枝葉横断面:油浸対物レンズ100倍使用

 枝葉の葉緑細胞の壁には無数の乳頭があるが、低倍率の顕微鏡では見逃しやすい。そこで、枝葉の背面側から合焦位置を変えて何枚か撮影した(y〜aa)。さらに枝葉を縦断面で切って、葉緑細胞の表面がみられるようにしてみた(ab)。葉緑細胞の壁表面がよくわかるよう、油浸100倍レンズを用いて、葉の横断面の画像を加えた(ac, ad)。

 平凡社図鑑で、ミズゴケ節から種への検索表をたどるとイボミズゴケ Sphagnum papillosum に落ちる。平凡社図鑑の解説はあまりにも簡略なので、滝田(1999)を参照すると、観察結果と記載はほぼ一致する。ただ、滝田では「茎葉の透明細胞には膜壁があって貫通せず、糸もない」とあるが、本標本の茎葉では、画像(q, r)にあるように、貫通する孔もあれば糸もあった。