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[標本番号:No.731   採集日:2009/09/21   採集地:福島県、昭和村]
[和名:オオカサゴケ   学名:Rhodobryum giganteum]
 
2009年10月17日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(a) 植物体、(b) カサ状の頂部、(c) 乾燥標本、(d) 水で戻した標本、(e) 茎の上部とカサ部、(f) 茎中央部の葉

 先月21日に南会津の昭和村の小湿地脇で見事なオオカサゴケに出会った(a)。2〜3m×6〜8mほどの大きな群れを作っていた(alt 650m)。長い匍匐茎が地下をはい、地上茎は6〜10cm、茎頂端に広がったカサ部は径3〜4cmに及ぶ(b)。湿時は見事だが、持ち帰った標本は乾燥して貧相な姿となっていた(c)。しかし水没させるとすぐに元の見事な姿によみがえった(d)。
 茎頂には大きな濃緑色で大形の葉を集中してつけるが、茎の中部から下の葉は赤褐色で小さい(e)。赤褐色の小さな葉は、長さ3〜6mm、二等辺三角形〜卵形で葉頂は尖り、上半部の縁には一重の鋭い歯がある(g〜i)。茎の上部に近づくと淡緑色となり、形も大きくなって、縁の歯は一部二重となり、大形の葉に続いていく(k)。
 
 
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(g, h) 茎中央部の葉、(i) 茎中部の葉:上半、(j) 茎中部の葉:葉身細胞、(k) 茎中部上端の葉、(l) 同左:葉身細胞、(m) 茎中部の葉:上部横断面、(n) 同左:下部横断面、(o) 同左:葉面横断面、(p, q) 同左:葉の基部縁からは仮根が出る、(r) 仮根

 赤褐色の小さな葉は、横断面にガイドセルやステライドはなく、中心束のような構造も見られなず(m, n)、葉基部の縁からは仮根が出ている(p, q)。仮根の表面には微細な乳頭がある(r)。
 
 
 
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(y)
(y)
(z)
(z)
(aa)
(aa)
(ab)
(ab)
(ac)
(ac)
(ad)
(ad)
(s, t) 茎の横断面、(u) 茎頂端の葉、(v) 同前:上半部、(w) 同前:葉の縁、(x, y) 同前:葉縁の二重の歯、(z) 同前:葉下部の縁、(aa) 葉の横断面:先端付近、(ab) 同前:上部、(ac) 同前:中央部、(ad) 同前:下部

 茎の横断面には中心束があり、表皮細胞は小型で薄膜の細胞からなる(s, t)。茎の頂端に集まって着く大型の濃緑色の葉は、長さ1〜2cmで、狭い基部から長い倒卵形で、葉先は狭く尖る(u)。葉上半の縁には二重の鋭い牙状の葉があり(v〜y)、下半部の縁には狭い舷がある(z)。中肋は太く、葉頂近くに達する。葉身細胞は六角形で、葉身中央では長さ100〜120μ、基部近くでは長さ140〜160μm、葉先付近では65〜90μmと短くなる。葉の横断面で中肋には、中心束のような組織があり、ステライドやガイドセルはなく、葉身部の細胞の表面は薄膜で、わずかに凸状となっている(aa〜ad)。