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[標本番号:No.796   採集日:2009/12/02   採集地:埼玉県、越生町]
[和名:オタルヤバネゴケ   学名:Cephalozia otaruensis]
 
2009年12月03日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a, b) 植物体、(c) 採集標本の一部、(d, f) 背面 、(e, g) 腹面 、(h) 葉、(i, j) 葉身細胞、(k, l) 分枝部分

 昨日奥武蔵の林道でいくつかのコケを採取した。そのうちの一つ、渓流に沿った径脇で、湿った土面に薄い層をなしてついていた苔類を観察した(a, b)。なお、採取にあたってルーペを使って花被をつけたものを探したが見つからなかった(alt 440m)。
 植物体は小さく、茎ははい不規則に分枝し、長さ6〜12mm、葉を含めた茎幅は0.5〜1.2mm。分枝型はムチゴケ型ないしヤスデゴケ型(k, l)。葉はやや斜めに瓦状につき、接在〜離在して開出し、1/2まで2裂し、裂片は三角形となって先は鋭い。各裂片の間はU字型になる。葉身細胞は方形〜多角形で、長さ30〜70μm、トリゴンは無く、薄膜で表面は平滑。油体は微小で各細胞にいくつかあるが、油体がみられない細胞もある。仮根は腹側からまばらに出る。腹葉はない。

 ヤバネゴケ属 Cephalozia の苔類まではよいだろう。平凡社図鑑で種への検索表をたどると、[B. ] の選択肢で「背縁基部はほとんど下延せず,先端は相接しない」ものと、「背縁基部は長く下延し,先端は相接する」とに別れている。
 標本の背縁基部は軽く下延しているようにも見える(c, f)。そこで後者の枝を選ぶと、タイワンヤバネゴケに落ちてしまうが、これは「屋久島以南」となっているのでおかしい。あらためて前者の枝を選ぶと、オタルヤバネゴケ C. otaruensis に落ちる。そこで当該種の説明を読むと、全体にサイズがひどく小さいが、観察結果とほぼ一致する。