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[標本番号:No.805   採集日:2009/12/02   採集地:埼玉県、越生町]
[和名:ガーベルホウオウゴケ   学名:Fissidens gardneri]
 
2009年12月10日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(a) 植物体、(b) 乾燥時、(c, d) 湿時、(e) 葉、(f) 葉の上半、(g) 茎中央部の葉、(h) 葉頂部、(i) 葉背翼の細胞、(j) 茎頂部付近の葉、(k) 葉腹翼の舷、(l, m) 葉の横断面、(n) 茎と葉の横断面、(o) 茎の横断面

 埼玉県越生町の黒山三滝近くの林道脇の暗い岩壁(alt 330m)に小さなホウオウゴケの仲間が着いていた。多くの個体は葉を含めた高さは2〜4mmで、6〜8対の葉が上部に集まってつく(c, d)。乾燥すると葉が巻縮する(b)。葉は長楕円状披針形で、長さ0.8〜1.2mm、円頭〜鈍頭で、葉縁に舷はない。中肋は明るく透明で葉頂部には達しない。葉身細胞は方形〜六角形で、長さ8〜12μm、表面には4〜6個の乳頭があり、細胞の境界は深く沈んで見える(h, i)。
 一部に6〜8mmほどのやや大きめの個体があり、この茎の上部に付く葉には腹翼の縁に明るい舷がある(j, k)。上部1〜2対の葉より下のはでは、腹翼に舷は見られない。腹翼に舷のある葉でも、舷のない葉でも、葉の横断面にはガイドセルとステライドがあり、背翼と上翼の両面、腹翼の外側の面には複数の乳頭がある(l〜n)。茎の横断面には中心束があり、表皮は厚壁小形の細胞からなる(n, o)。朔をつけた個体はみあたらなかった。

 やや大きめで上部の葉の腹翼に舷のある個体は、朔をつける(あるいはつけていた)個体かもしれない。平凡社図鑑でホウオウゴケ属 Fissidens の検索表をたどると、ガーベルホウオウゴケ Fissidens gardneri に落ちる。種の解説はジングウホウオウゴケ F. linearis var. obscurirete に準ずる形で簡潔にしか記されていないが、おおむね観察結果と合致する。念のために Noguchi(Part1 1987)にもあたったが、間違いなさそうだ。