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[標本番号:No.814   採集日:2009/12/13   採集地:栃木県、栃木市]
[和名:アオギヌゴケ   学名:Brachythecium populeum]
 
2009年12月19日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(a) 植物体、(b, c) 標本:乾燥時、(d) 標本:湿時、(e, f) 茎葉

 沢沿いの道脇の岩に若い朔を多数つけた蘚類がマットを作っていた(alt 240m)。乾燥すると、葉をやや茎に接近させるが密着するまでにはいたらない(b, c)。湿っても大きく葉を展開することはない(d)。一次茎は岩をはい、二次茎が斜上し不規則に分枝する。茎の横断面には弱い中心束がある(g)。
 二次茎の葉は披針形で鋭頭、長さ1.7〜2.1mm、葉縁には微細な歯があり、中肋が葉頂近くに達する(e, f)。葉身細胞は長楕円形〜線形で、長さ30〜50μm、幅4〜6μm、平滑で薄膜(h)。翼部はあまり分化せず、長さ15〜25μm、幅8〜12μmの方形の細胞が並ぶ(j)。葉の横断面で中肋にはガイドセルもステライドもない(k)。なお、茎葉には縦皺などはない。
 
 
 
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(g) 茎の横断面、(h) 茎葉の葉身細胞、(i) 茎葉上部、(j) 茎葉翼部、(k) 茎葉横断面、(l, m, n) 枝葉、(o) 枝葉の葉身細胞、(p) 枝葉上部、(q) 枝葉翼部、(r) 雌苞葉

 枝葉は、茎葉よりやや細めで小降りの披針形で、葉縁の歯は茎葉よりも明瞭で、葉身細胞や翼部の細胞は茎葉とほぼ同様(l〜q)。雌苞葉は、基部が朔柄を鞘状に包み込み、中程で強く反曲し長く延び、長さ1.2〜2.2mm(r〜t)。葉身細胞は線形で長さ35〜65μm、幅8〜10μm、平滑で(u)、基部では幅10〜12μmの矩形〜長楕円形の細胞が並び、中肋はない(v)。
 
 
 
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(y)
(y)
(z)
(z)
(aa)
(aa)
(ab)
(ab)
(ac)
(ac)
(ad)
(ad)
(s, t) 苞葉、(u) 苞葉の葉身細胞、(v) 苞葉基部、(w) 胞子体、(x) 朔柄上部、(y) 朔柄上部の表面、(z) 朔基部の気孔、(aa) 朔歯、(ab) 外朔歯、(ac) 外朔歯基部、(ad) 外朔歯と内朔歯の一部

 朔柄は長さ1.5〜2.0cm、赤褐色で上半部に目立たない乳頭がある(w, x, y)。朔の基部にはまばらに気孔がある(z)。朔歯は二重で各々16枚で、外朔歯と内朔歯はほぼ同じ高さ(aa)。外朔歯は披針形で、下部には横状があり上部は微細な乳頭に覆われる(ab, ac)。内朔歯は1/2あたりまで基礎膜となっていて、間毛と歯突起が伸びている(ad)。

 アオギヌゴケ科 Brachytheciaceae アオギヌゴケ属 Brachythecium の蘚類だと思う。平凡社図鑑の検索表にあたると、アオギヌゴケ B. populeum に落ちる。種の解説はハネヒツジゴケに準ずる形で書かれており、変異に富むこと、ハネヒツジゴケよりやや小振りであることが記されている。Noguchi(Part4 1991)よ読むと、観察結果とほぼ符合する。