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[標本番号:No.823   採集日:2009/12/13   採集地:栃木県、鹿沼市]
[和名:ユミゴケ   学名:Dicranodontium denudatum]
 
2009年12月26日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a) 植物体、(b) 乾燥時、(c) 湿時、(d) 仮根、(e) 茎の上部、(f) 葉、(g) 葉の下半、(h) 葉身細胞、(i) 葉の先端部、(j) 葉の上部、(k) 葉の翼部、(l) 茎の横断面、
(m) 葉の横断面:翼部、(n) 同前:鞘部、(o) 同前:下部、(p) 同前:中央下部、(q) 同前:中央上部、(r) 同前:先端近く

 前日光林道の途中(alt 840m)で日陰の道壁の土にシッポゴケ科 Dicranaceae の蘚類がついていた(a)。乾燥しても湿時と姿はあまり変わらず(b, c)、葉が強く弓形に反り返る。茎は高さ1.5〜2.0cm、茎全体にわたって暗褐色の仮根に覆われ(d)、茎上部では葉がほとんど落ちて基部ばかりとなっている(e)。
 葉は光沢があり、長さ5〜6mm、披針形で、下部には小さな鞘部があり、先端部は針状に尖る。全体に樋状で先端部は縁にも背面にも針でおおわれる(i)。中肋が鞘部では葉幅の1/2〜1/3ほどあるが、中央部から上部では葉身の大部分を占め、葉身部との境界は不明瞭(g, j)。
 葉身細胞は矩形で、鞘部から肩部では、長さ30〜45μm、やや厚膜で平滑(h)、肩から上部では長さ15〜25μm(j)。翼部の細胞は透明で大きく、他の葉身細胞と明瞭に区別でき、薄膜(k)。茎の横断面には中心束があり、表皮細胞はやや厚膜(l)。
 葉の横断面を各部で切り出してみた。翼部を含む面では葉縁の大型透明な細胞が明瞭にわかる(m)。葉の下部(鞘部)や葉の中央部での横断面をみると、いずれも中肋との境界はきわめて不明瞭で、中肋部には背腹両面にステライドがある(n〜q)。葉の先端付近の横断面にはステライドはみられないものが多かった(r)。

 胞子体をつけた個体はみあたらなかったが、保育社図鑑の検索表でも平凡社図鑑でも、ユミゴケ属 Dicranodontium に落ちる。平凡社図鑑の種への検索表をたどると、ユミゴケ D. denudatum となる。種の解説をよむと観察結果とほぼ符合する。