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[標本番号:No.844   採集日:2010/01/05   採集地:東京都、奥多摩町]
[和名:ナガスジハリゴケ   学名:Claopodium prionophyllum]
 
2010年1月24日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c, d) 標本:乾燥時、(e, f) 標本:湿時、(g, h) 茎の表面、(i) 茎葉と枝葉、(j) 茎葉、(k) 茎葉の葉身細胞、(l) 茎葉の先端、(m) 茎葉の基部、(n) 枝葉、(o) 枝葉の先端、(p) 枝葉の基部、(q) 枝葉の横断面、(r) 茎の横断面

 奥多摩で、石灰岩を積み重ねて造られた石垣の表面を蘚類が覆っていた(a, b)。周辺には石灰岩切り出しの現場が大きく広がっている(alt 700m)。ハリゴケ属 Claopodium の蘚類のようだ。
 茎は弱く羽状に分枝し、乾燥すると葉がわずかに縮れる(c〜f)。茎や枝の表面は平滑で、毛葉などは見られない(g, h)。茎葉は卵形の基部から急に細くなり先端は鋭く尖り、長さ1.0〜1.3mm、葉縁には微歯があり、中肋は葉頂に達する(i, j)。枝葉はずっと小さく、長さ0.8〜1.0mm、茎葉よりやや細く、葉縁の微歯は茎葉の縁よりも明瞭(n)。葉身細胞は、茎葉でも枝葉でもほぼ同様で、方形〜多角形でやや角張り、長さ5〜15μm、中央に一つの尖った乳頭がある(k, m, p, q)。葉基部にはやや長めの矩形で乳頭のない細胞が見られる。翼部はほとんど分化しない(m, p)。茎や枝の横断面には中心束があり、表皮は厚膜の小さな細胞からなる(r)。

 シノブゴケ科 Thuidiaceae ハリゴケ属の蘚類だと思う。平凡社図鑑の検索表をたどると、ナガスジハリゴケ C. prionophyllum に落ちる。生育環境も図鑑には「石灰岩上に生える」とある。保育社図鑑には「茎や枝の上には少数の小さい三角形の毛葉がある」と記されるが、本標本では毛葉は見つからなかった。