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[標本番号:No.849   採集日:2010/02/21   採集地:千葉県、鋸南町]
[和名:ミジンコシノブゴケ   学名:Pelekium pygmaeum]
 
2010年2月27日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 植物体、(b) 乾燥時、(c) 湿時、(d) 茎と枝、(e, f) 茎の表面、(g) 茎葉:表面に合焦、(h) 茎葉:細胞輪郭に合焦、(i) 枝葉:表面に合焦、(j) 枝葉:細胞輪郭に合焦、(k) 枝葉の横断面、(l) 茎の横断面

 房総半島南部鋸南町で標高240mほどの丘陵の日陰の岩に暗緑色の小さな蘚類が薄いマットをつくっていた(a)。ルーペでみるとチャボシノブゴケ Thuidium sparisifolium のように思えるが、茎の表面に毛葉が見られなかったので採取してきた(d)。
 最初に茎の表面を顕微鏡でみたが、毛葉らしきものがほとんど見られず、茎葉も非常に小さい(e, f)。あちこち見ると、ごく一部の茎にわずかに毛葉らしきものがみつかった。その部分を横断面で切ってみると毛葉がある。なお、茎の横断面に中心束はなく、表皮細胞の一部には乳頭がある(l)。
 茎葉は三角形で、長さ0.2〜0.3mm、先端は細く尖り、中肋が葉先ちかくに達する。しかし、多くの茎葉は先端がちぎれて完全な葉は数えるほどしかみつからない。葉身細胞は六角形で、長さ6〜15μm、表面にはひとつの乳頭がある(g, h)。
 枝葉は長卵形で葉頂は広く、長さ0.15〜0.2mm、中肋は葉長の3/4に達する。葉身細胞は六角形で、長さ6〜8μm、表面に乳頭が一つある(i, j)。横断面切り出しはうまくいかず、枝葉基部近くで切ってしまい、乳頭はあまり目立たない(k)。

 毛葉が非常にわずかにしか見られないが、やはりチャボシノブゴケとしてよいと思う。それにしても、茎葉、枝葉ともに非常に小さく、取り扱いに難儀した。何度も研いで先端が柔らかくなってしまったピンセットでは、葉の押さえや枝からの取り外しは無理だった。あらためてピンセットはたとえ高価ではあっても消耗品であることを痛感した。

[修正と補足:2010.02.28]
 識者の方から、ミジンコシノブゴケ T. pygmaeum のようだとのご指摘をいただいた。改めて平凡社図鑑をみると「茎や枝の表面は密にパピラで覆われる」とある。同図鑑に種の解説はないので、Noguchi(Prat4 1991)にあたると、観察結果とほぼ一致することが分かった。以下にあらためて、枝(m〜p)と茎(q, r)の表皮の画像を掲載する。ご指摘ありがとうございました。
 

 
 
(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
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 思い込みによって、図鑑の検索表を全く見なかったことによる初歩的ミスの典型といえる。なお、学名は Z. Iwatsuki "New Catalog of the Mosses of Japan" にしたがった。