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[標本番号:No.855   採集日:2010/03/17   採集地:千葉県、大多喜町]
[和名:ニワツノゴケ   学名:Phaeoceros carolinianus]
 
2010年3月18日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(a, b) 植物体、(c) 標本、(d, e) 胞子体の基部と包膜、(f) 葉状体裏面の仮根、(g) 葉状体横断面、(h) 葉状体背面表皮の細胞:水封、(i) 同前:メルツァー液で封入、(j) ピレノイドのアミロイド反応、(k) 胞子体縦断面、(l) 胞子体縦断面:若い胞子、(m, n) 胞子体横断面、(o) 胞子体表面の気孔、(p) 仮根

 昨日房総半島南部の麻綿原高原で(alt 205m)、林道脇の湿った岩壁に若いツノゴケ類が小さな群落を作っていた(a, b)。ツノゴケ類を採取したのは久しぶりだった。
 葉状体は、長さ6〜12mm、幅2〜5mm、不規則に二叉状に分枝し、縁は波状となっている。多数の胞子体が顕著な鞘状の苞膜の中から伸び上がっている。葉状体は中肋部と翼部が分化せず、腹面中央には仮根が密生する。
 葉状体の横断面をみると、表皮細胞は内部の細胞よりずっと小さく、表皮細胞には大きな葉緑体が一つあり、葉緑体にはピレノイドがある。表皮細胞をメルツァー液(ヨードを含む)で封入すると、ピレノイドがアミロイド反応を示し暗紫色に変わった。
 胞子体は細長い円筒状で、高さ15〜20mm、基部は鞘状の苞膜に包まれる。苞膜は円錐台形で、表皮細胞は葉状体の表皮細胞と同様に葉緑体を一つ含み、内部組織を作る細胞より小さい。胞子体表面には気孔が散在する。

 ニワツノゴケ属 Phaeoceros のニワツノゴケ P. carolinianus かコニワツノゴケ P. parvulus だろうと思う。本標本はまだ若いせいか、ロゼットも小さく、立ち上がる胞子体もまだ未成熟だった。胞子体の先が縦裂したものはなく、胞子も未成熟で小さく、まだ黄色味を帯びてはいない。それでも胞子表面には小乳頭が多数ある。弾糸の姿ははっきりせず、軸柱もその他の組織から明瞭に分離していなかった。コニワツノゴケの可能性の方が高いと思うが、コニワツノゴケについて記された文献が手元にないので、とりあえずニワツノゴケとした。
 ピレノイドは光合成産物であるデンプンなどの貯蔵物質に囲まれるという。そうであれば、ヨウ素を含む試薬類でアミロイド反応(ヨウ素・デンプン反応)を起こすはずだ。そこで、菌類で常用されるメルツァー液で封入してみた。うがい薬のイソジンでも同様のアミロイド反応がみられた。