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[標本番号:No.0866   採集日:2010/04/11   採集地:神奈川県、清川村]
[和名:チジミバコブゴケ   学名:Onchophorus crispifolius]
 
2010年4月23日(金)
 
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(c)
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(f)
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(l)
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(a, b) 植物体、(c) 標本:乾燥時、(d) 標本:湿時、(e) 乾燥時、(f) 湿時、(g, h) 葉、(i) 葉身細胞、(j) 葉の先端部、(k) 葉の翼部、(l) 葉上部の横断面

 神奈川県東丹沢の本谷川林道脇の岸壁に小さな塊を作っていたシッポゴケ科 Dicranaceae のコケを観察した。茎は高さ0.8〜1.2cm、葉の基部は鞘状で明るく、急に細くなって線状に伸び、長さ3〜4mm、上部の縁には目立たない小さな歯がある。葉の線状部の葉身細胞は2細胞層の厚みがあり、中肋は強く葉頂に達する。葉身細胞は丸みのある方形〜矩形で、長さ6〜10μm、厚壁で平滑、葉下部ではやや長めの矩形で、翼部の細胞は薄膜で矩形の細胞が並ぶ。葉の横断面で中肋にはガイドセルとステライドがある。茎の横断面には弱い中心束がある。
 
 
 
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
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(s)
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(t)
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(u)
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(v)
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(w)
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(x)
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(m) 葉幅広部の横断面、(n) 葉基部の横断面、(o) 茎の横断面、(p) 胞子体、(q) 朔と帽、(r) 朔・蓋・帽、(s, t) 気孔、(u) 朔歯、(v) 朔歯下部、(w) 朔歯上部、(x) 胞子

 朔柄は長さ3〜4mm、黄色で表面は平滑。朔はやや傾いてつき、長さ2mm前後で非相称、基部腹側に小さなこぶがある。朔の蓋は嘴状で、僧帽形の帽がある。朔歯は一重で16枚、披針形で赤褐色、中程から深く二裂し、下部表面には細かな縦条がある。胞子は球形で、径18〜25μm。

 コブゴケ属 Onchophorus のチジミバコブゴケ O. crispifolius だろう。持ち帰った標本の朔は、蓋を取ると、朔歯が簡単に崩れてしまうものが多く、整った形の朔歯を取り出すことができなかった。また、採集した標本は、一つの塊のなして葉の形もそっくりに見えたが、チジミバコブゴケの他に朔が直立して相称のシッポゴケ属チジレゴケ属らしき蘚類が1/3ほど混じっていた。実体鏡の下で葉の形をみながら分別して、新たに標本No.879を与えることにした。

[修正と補足:2010.04.26]
 標本No.866と同じ林道の岩壁でチジミバコブゴケと思われる蘚類を採取した。標高で約50m高く、距離は3kmほど上流に進んだ場所だった。わざわざ新たに観察覚書を書くのはやめて、ここに採取データのメモと、朔歯を中心とした画像だけを追加した。
 

 
 
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(i)
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(j)
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(a) 植物体、(b) 標本:乾燥時、(c) 標本:湿時、(d) 葉、(e) 葉身細胞、(f) 朔・蓋・帽、(g) 朔歯の開閉、(h) 朔歯、(i) 朔歯下部、(j) 朔歯上部

[標本番号:No.0869   採集日:2010/04/11   採集地:神奈川県、清川村] [alt 550m]