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[標本番号:No.0868   採集日:2010/04/11   採集地:神奈川県、清川村]
[和名:ナガバチジレゴケ   学名:Ptycomitrium linearifolium]
 
2010年4月24日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
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(i)
(i)
(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
(r)
(a, b, c) 植物体、(d) 標本:乾燥時、(e) 標本:湿時、(f, g) 葉、(h) 葉身細胞、(i) 基部の細胞、(j) 葉上部の歯、(k, l) 葉の横断面、(m) 茎の横断面、(n, o) 朔柄基部と雄花序、(p) 胞子体、(q) 朔歯、(r) 朔歯下部

 神奈川県東丹沢の本谷川林道脇で、日当たりのよい岸壁のあちこちに点々と丸い塊をなしていたコケを観察した(alt 500m)。基部で枝分かれする枝は、長さ3〜6cm、乾燥すると葉が枝に接するようになって強く巻縮し、湿ると広く展開する。
 葉は卵形の基部から長く線形〜披針形に伸び、長さ4.5〜5.5mm、上半部の縁には数細胞からなる歯があり、中肋は葉頂下に終わる。葉身細胞は葉の中程では丸みを帯びた方形で、長さ6〜12μm、厚壁で平滑。葉の基部に近づくと矩形となり、翼部あるいは鞘部では、やや薄膜で大形の矩形細胞がならび、明瞭な区画をなす。葉の横断面で、中肋にはガイドセルがあり、ステライドがよく発達している。茎の横断面には弱い中心束がある。
 朔柄は赤褐色の基部をもち黄褐色で、長さ5mm前後、表面は平滑。雌苞葉に包まれるように、朔柄の基部には雄花序がみられる。朔は直立し、長さ1.5mm前後で相称。朔歯は赤色で一重、16枚からなり、深く二裂する。朔歯表面は微細な乳頭に覆われる。

 よく朔をつけていたが、何れも蓋や帽を伴った朔はなかった。チジレゴケ属 Ptycomitrium のナガバチジレゴケ P. linearifolium だろう。