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[標本番号:No.0880   採集日:2010/04/30   採集地:岡山県、真庭市]
[和名:セイナンヒラゴケ   学名:Neckeropsis calcicola]
 
2010年5月5日(水)
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
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(a, b, c) 植物体、(d) 標本、(e) 枝の一部、(f) 葉の付き方、(g, h) 葉、(i) 葉の上部、(j) 葉の下部、(k) 葉身細胞、(l) 葉の基部、(m) 葉の頂部、(n) 葉の縦断面、(o, p, q) 葉の横断面、(r) 枝の横断面

 5月1〜3日に岡山県高梁市で行われた日本戦苔類学会主催「2010年度コケフォレー」に参加した。ゴールデンウイークのラッシュを避けて30日午前中に岡山県に入った。この日、真庭市と新見市の石灰岩地を歩いていくつかのコケを採取した。しばし順不同に観察しようと思う。
 ヒラゴケ科 Neckeraceae の蘚類が厳島神社脇のほの暗い石灰岸壁を一面に覆っていた(alt 190m)。茎の長さが20cmを超える大形のヒラゴケ科蘚類に出会ったのは初めてのことだった。葉を含めた枝の幅は5〜7mm、葉を4列に著しく扁平につけている。
 葉は舌形で長さ2.4〜2.7mm、葉先は幅広く切頭で、乾燥しても湿っていても、その姿はほとんど変わらず、著しい横しわがある。葉上部の縁には微細な歯があり、葉基部側の縁は狭い幅で折れ曲がっている。中肋は弱くて短く、しばしば途中から二裂する。
 葉身細胞は長楕円形〜太い線形で、長さ15〜40μm、幅3〜5μm、平滑で膜は厚く随所にくびれがある。葉先では菱形〜矩形で短く、翼部の細胞はほとんど分化していない。葉を縦断面で切ると大きく波打ち、横断面で切ると中肋は弱く2細胞層の厚みしかない。茎や枝の横断面に中心束はなく、表皮は厚壁の小さな細胞からなる。

 朔をつけた個体を探したが見つからなかった。なお、5月1〜3日に訪れた石灰岩壁でも同じ蘚類に多数出会ったが、朔をつけた個体は見つからなかった。保育社図鑑でヒラゴケ科の検索表をたどると、リボンゴケ属 Neckeropsis に落ちる。ついで、リボンゴケ属の検索表をたどると、すんなりとセイナンヒラゴケ N. calcicola に落ちる。種の解説を読むと観察結果とほぼ一致する。岩壁から長く垂れ下がり、葉に著しい横しわがあることがら、フィールドで一目みたときに直ぐにセイナンヒラゴケだろうと思ったが、念のために一通り観察してみた。顕微鏡はもちろんルーペがなくとも肉眼だけで楽に同定できる非常に特徴的な蘚類だと思う。