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[標本番号:No.0915   採集日:2010/05/03   採集地:岡山県、新見市]
[和名:レイシゴケ   学名:Myurella sibirica]
 
2010年5月6日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c) 標本、(d, e) 茎と葉、(f) 葉の拡大、(g, h) 葉、(i) カバーグラスをかけた葉、(j, k, l) 葉、(m, n) 葉の上半、(o, p) 葉の下半、(q) 葉の断面、(r) 茎の横断面

 岡山県新見市の阿哲台にある鍾乳洞の入り口付近で採取したコケを観察した(alt 460m)。石灰岩の窪みに小さな塊を作った糸状のコケは、まるで苔類を思わせる。葉を含めた茎の幅は0.4〜0.6mm、わずかに分枝し、枝の先は鞭状に細くなるものが多い。
 葉は覆瓦状につき、乾燥してもあまり茎に接することなく、深く椀に凹み、長さ0.4〜0.6mm、広い卵形から類円形で、葉先は急に細くなって尖り、葉縁にはほぼ全周にわたって鋭い歯がある。中肋はないか、あっても非常に短く目立たない。
 葉身細胞は菱形〜多角形で、長さ15〜25μm、背面中央に一つの大きな刺状の乳頭がある。葉身細胞の腹面側は平滑で、薄膜。茎の横断面で弱い中心束があり、表皮は厚膜で小さな細胞からなる。

 葉の形が独特で印象的だ。葉は非常に脆く、枝から外した葉を複数スライドグラスに載せたが、カバーグラスを載せたとたんに、すべての葉が崩れてしまった(i)。葉の姿を正確に確認するには、茎から取り外さずに枝ごとプレパラートにせねばならないようだ(f)。また、葉の凹みが大きいため、全体にピントを合わせた画像を撮影することはできない(j, k, l)。ヒゲゴケ科 Theliaceae レイシゴケ属 Myurella のレイシゴケにまちがいない。マクロレンズを持っていなかったことが悔やまれた。