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[標本番号:No.0908   採集日:2010/05/02   採集地:岡山県、高梁市]
[和名:コガネハイゴケ   学名:Campyliadelphus chrysophyllus]
 
2010年5月14日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
(p)
(q)
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(r)
(r)
(a, b, c) 標本:乾燥時、(d, e, f) 標本:湿時、(g, h) 茎葉と枝葉、(i) 茎葉、(j) 枝葉、(k) 茎葉の葉身細胞、(l) 茎葉の翼部、(m) 茎葉の先端、(n) 枝葉の翼部、(o) 茎葉の横断面、(p) 枝葉の横断面、(q) 茎の横断面、(r) 枝の横断面

 岡山県高梁市の林道脇に転がった石灰岩塊に光沢のあるこけがついていた(alt 420m)。カメラを持っていなかったので、フィールドでの写真はない。
 茎葉や枝葉は乾燥しても開出したままで、湿ったときと姿にほとんど変わりない。枝は不規則に分枝し、葉を含めた幅は1.3〜2.0mm。茎葉は広卵形の基部から漸尖し、長さ1.2〜1.5mm、葉先は鋭頭で、葉全体が広めの披針形となり、葉縁は全縁。中肋が葉長の2/3ほどに達する。
 茎葉の葉身細胞は線形で、長さ30〜50μm、幅4〜6μm、平滑でやや厚膜。翼部は明瞭に分化し、矩形〜方形の細胞が並ぶ。枝葉は茎葉よりやや細身の基部をもち、長さ0.9〜1.3mm。葉身細胞や翼部の様子は茎葉とほぼ同じ。茎や枝の横断面には弱い中心束があり、表皮細胞はやや薄膜で中形の細胞からなる。なお、茎や枝の表面に毛葉はない。

 朔をつけた個体は見あたらなかった。ヤナギゴケ科 Amblystegiaceae の蘚類だろう。保育社図鑑の検索表をたどると、「中肋は1本で葉の中部以上に達し」「葉は乾いても規則的に開出する」のでコガネハイゴケ属 Campyliadelphus に落ちる。属から種への検索表からはコガネハイゴケ C. chrysophyllus が候補に残る。種の解説はほぼ観察結果と符合する。念のため平凡社図鑑にあたると、種の解説に「翼細胞は小さく,方形〜矩形,長さ20μm以下」とある。あらためて、何枚かの葉の翼部の細胞を再確認すると、一部に25μmほどの細胞もあるが、おおかたの細胞は20μmを超えていない。なお、フィールドでの姿は標本No.471No.391と似通っている。