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[標本番号:No.0937   採集日:2010/05/16   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:コオイゴケ   学名:Diplophyllum plicatum]
 
2010年5月19日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c) 標本背面、(d) 標本腹面、(e) 背面、(f) 腹面、(g, h) 葉、(i) 分離した背片と腹片、(j) 腹片の葉身細胞、(k) 腹片先端部、(l) 腹片基部、(m) 油体、(n, o) 葉の横断面、(p) 茎と葉のキール部の横断面、(q, r) 茎の横断面

 富士山の奥庭周辺(alt 2340m)の広葉樹とコメツガの混交林で、仄暗い林床の腐植土に群生していた苔類を採集した。茎は長さ4〜10cm、わずかに分枝し、仮根は少なく、葉を含めた枝の幅は3〜4mm。葉は茎に接在し、不等に二裂して強く折りたたまれ、背片は腹片よりずっと小さく、背片は倒瓦状につく。背片は長さ1.1〜1.5mm、斜めに開出し、長舌形で、縁には微細な歯がある。腹片は曲がった舌形〜楕円形で、長さ1.8〜2.1mm、円頭で葉上半には微細な歯がある。背片と腹片とをつなぐキール部は腹片の2/5ほどの長さがある。腹葉はない。
 葉身細胞は類縁形〜丸みを帯びた多角形で、腹片中央部では長さ20〜35μm、やや厚膜で表面には微細な乳頭がある。葉先付近の葉身細胞は方形〜矩形でやや小さく、葉基部ではやや大形の楕円形〜矩形となり膜には括れがある。背片の葉身細胞もほぼ同様で、背腹ともに葉身細胞には大きなトリゴンがある。葉の横断面ではキール部の細胞は壁も厚く、細胞はやや大きい。茎の横断面をみると表皮細胞がやや分化して厚膜となっている。

 背片が腹片よりずっと小さく、折れ目は明瞭であることからヒシャクゴケ科 Scapaniaceae の苔類にまちがいない。また、葉の裂片は長楕円形で、葉細胞のトリゴンは大きいからシロコオイゴケ属 Diplophyllum のコオイゴケ D. plicatum にまちがいない。