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[標本番号:No.0872   採集日:2010/04/11   採集地:神奈川県、清川村]
[和名:キダチヒラゴケ   学名:Homaliodendron flabellatum]
 
2010年5月24日(月)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
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(a, b, c) 植物体、(d) 標本、(e) 乾燥時、(f) 湿時、(g, h, i) 葉、(j) 葉身細胞、(k) 葉の先端、(l) 葉の基部:中肋近く、(m) 葉の基部:葉縁、(n, o) 葉の横断面、(p, q, r) 茎の横断面

 4月11日に丹沢の本谷川の林道を歩いたときに採取したコケがまだ数種類残っていた。今日はそのうち、道脇の岸壁に着いていたヒラゴケ科 Neckeraceae の蘚類を観察した(alt 590m)。一次茎は岩を匍い、二次茎は平らに2〜3回羽状に分枝し、光沢のある葉を扁平につける。二次茎は長さ3〜6cm、茎状部で数回分枝し団扇状となる。乾燥しても葉は縮れず、湿ったときと姿はほとんど変わらない。葉は長さ2.0〜3.5mm、枝の中程からやや上で大きく、枝の基部と枝先で小さくなる。葉は楕円形〜長卵形で非相称、先端は尖り、葉先付近には歯牙があり、基部の縁は片側だけ内曲する。中肋は細く、葉の1/2〜2/3に達する。葉身細胞は長い六角形〜長楕円形で、長さ30〜60μm、幅6〜8μm、やや厚膜。葉先の葉身細胞は菱形。葉基部の葉身細胞は、やや幅広の長楕円形となり膜には随所に括れがあり、基部の縁には小形で小さな細胞が並ぶ。葉の横断面で、中肋にはステライドはない。茎の横断面に中心束はなく、表皮細胞は厚膜で小さい。

 朔をつけた個体は見あたらなかった。キダチヒラゴケ Homaliodendron flabellatum だろう。フィールドでみた群れはいずれも、汚れ、干からび、およそ新鮮な状態からはほど遠かった。