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[標本番号:No.0913   採集日:2010/05/03   採集地:岡山県、高梁市]
[和名:オオギボウシゴケモドキ   学名:Anomodon giraldii]
 
2010年6月6日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c) 標本:乾燥時、(d) 標本:湿時、(e) 乾燥時、(f) 湿時、(g, h) 枝葉、(i) 枝葉の葉身細胞、(j) 枝葉の頂部、(k) 枝葉の翼部、(l) 枝葉の横断面、(m) 二次茎と枝、(n) 枝先の鞭状部分、(o) 鞭状枝の葉、、(p) 二次茎の葉、(q) 鞭状枝の葉の葉身細胞、(r) 枝の横断面

 5月3日に岡山県高梁市の渓谷で、道路脇の日当たりのよい岩から蘚類が塊状となって垂れ下がっていた(alt 350m)。塊をほぐすと、それぞれ小さな葉をつけた匍匐茎と枝が絡み合って塊状となったものだった。また、枝先は殆どが鞭状に長くのび(c, e)、一部の枝だけが緑色のやや大きめの葉をつけていた(d)。殆どの枝葉は褐色で小さく、乾燥してやや覆瓦状に枝についていた。画像(c)タイプの枝が大部分で、画像(d)のように緑色の葉をつけた枝はごくわずかしかなかった。乾燥した標本は、やや硬めの絡み合った糸くず状態となっていた。茶褐色の葉は大部分が崩れてしまっていたので、緑色の若い枝葉(g, h)と二次茎の葉(p)、鞭状に伸びた枝(n)についた小さな葉(o, q)を観察した。

 一次茎はわずかに小さな葉をつけ岩から垂れ下がり、随所で二次茎をだす。二次茎は全体がゆるい樹状となり、一部の茎が長く伸びている。枝葉は光沢がなく、長さ0.8〜1.2mm、卵形の基部を持った披針形で、鋭頭、葉縁は全縁で狭く反曲する。中肋は葉先近くに達する。葉身細胞は不規則な菱形〜方形で、長さ8〜12μm、やや厚膜で、表面には複数の乳頭がある。葉の基部にはやや長めの矩形の細胞もあり、中肋近くの矩形細胞は平滑。葉の横断面で、中肋はステライドやガイドセルはない。茎や枝の横断面に中心束はなく、表皮細胞は厚膜で小さい。
 鞭状に伸びた枝には小さな葉がつき(o)、葉身細胞の様子などは普通の枝葉と変わりない(q)。一方、匍匐ないし垂れ下がる一次茎や、二次茎にも小さな葉があり、これらの葉の上半部の縁は鋸歯状になったものが多い(p)。同じ形は、鞭状となった茎葉にも高頻度でみられる。

 キヌイトゴケ属 Anomodon のオオギボウシゴケモドキ A. giraldii だと思う。茎葉の縁だけをみると、イワイトゴケ属 Haplohymenium のムチエダイトゴケ H. flagelliforme のとさか状の鋸歯によく似ている。観察の始めに、鞭枝の先の葉やら、匍匐する茎の葉をみたので、ムチエダイトゴケではあるまいかと思ったが、鋸歯状となる部位や、普通の茎葉のありようは、Noguchi (Part4 1991)の図版にあるものとは異なっている。後日のため、覚書にアップしておくことにした。