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[標本番号:No.0932   採集日:2010/05/16   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:カラフトキンモウゴケ   学名:Ulota crispa]
 
2010年7月13日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c) 湿時、(d) 乾燥時、(e, f) 葉、(g) 葉の上半、(h) 葉の下半、(i, j) 葉身細胞、(k) 葉翼部の細胞、(l) 葉基部中央の細胞、(m, n) 葉の横断面、(o) 茎の横断面、(p) 朔と帽、(q) 胞子体、(r) 朔頸部の気孔

 5月16日に富士山の五合目付近で枝や樹幹についていた蘚類を観察した(alt 2400m)。少し高い位置についていたこともあって、採取した塊をホワイトバランス用のグレーの板の上に置いて撮影した(a, b)。茎は長さ5〜8mm、密に群生して丸い塊状につく。葉は乾燥すると巻縮する。
 葉は長さ2〜3mm、広卵形の基部から披針形に伸び、葉先はやや尖る。葉縁はほぼ全縁で、強い中肋が葉頂に達する。葉身細胞は類球形で、径6〜12μm、厚膜で表面に乳頭がある。葉基部の細胞は中央部では厚膜で平滑な矩形〜楕円形。葉基部の縁4〜6列の細胞は透明で縦横の壁の厚さが異なり、縦の隔壁が肥厚して厚く、横の隔壁は薄い。葉の横断面で中肋にステライドはない。茎の横断面に中心束はない。
 朔は円錐形の帽を載せ、帽の表面には上向きの細い毛が多数ある。朔柄は茎から伸び、長さ2〜3mm、朔は長い頸をもち、直立して相称。頸の部分に気孔がある。

 朔は多数ついていたが、大部分が未成熟で蓋を取り外すことはできなかった。朔歯もまだほとんどできていなかった。生態写真、朔や朔歯などの観察は後日の課題となる。
 帽の表面の長毛、葉基部縁の細胞壁の肥厚の特徴から、タチヒダゴケ科 Orthotrichaceae キンモウゴケ属 Ulota の蘚類に間違いない。保育社図鑑、平凡社図鑑ともに、検索表からはすんなりとカラフトキンモウゴケ U. crispa に落ちる。