Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.0958   採集日:2010/06/06   採集地:栃木県、日光市]
[和名:イワイトゴケ   学名:Haplohymenium triste]
 
2010年8月10日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c) 標本:乾燥時、(d) 標本:湿時、(e) 乾燥時、(f) 湿時、(g, h, i) 葉、(j) 葉身細胞、(k) 葉の先端、(l) 葉の基部、(m, n, o) 葉の横断面、(p) 枝の横断面、(q, r) 葉先が簡単に折れる

 6月6日に日光市の鶏頂山登山道脇の腐木の樹皮に着生していた繊細な蘚類を観察した(alt 1450m)。茎ははい、不規則に分枝し、細い紐か糸がからまったような印象をうける。乾燥すると葉が茎に密着し、葉を含めた枝の幅は0.4〜0.5mm、艶がない。湿ると葉を広く展開する。
 枝葉は長さ0.5〜0.9mm、卵形の基部から急に細くなって舌状に伸び、円頭からやや広い鈍頭。葉は舌状の部分から非常に折れやすく、各枝に完全な姿の葉は少ない。葉縁は全縁で、弱く透明気味の中肋が葉長の1/2辺りで不明瞭に消える。
 葉身細胞は六角形で、長さ8〜14μm、背腹の表面には数個の小乳頭がある。葉先部分の葉身細胞はやや小さく、葉基部ではやや大きめの方形〜長い六角形となる。葉の横断面で中肋は2細胞層の厚みがあるが、明瞭に分化はしていない。茎や枝の横断面に中心束はなく、表皮細胞は厚膜で小形。

 持ち帰った標本の大部分で葉の舌先が欠如し、完全な姿の葉はとても少なかった。水没させると、さらにまた舌先部分が折れて舌に落ちた。イワイトゴケ属 Haplohymenium の蘚類だろう。平凡社図鑑の検索表からはイワイトゴケ H. triste に落ちる。朔をつけた個体は見あたらなかった。