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[標本番号:No.0985   採集日:2010/08/11   採集地:栃木県、日光市]
[和名:イタチゴケ   学名:Leucodon sapporensis]
 
2010年9月17日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
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(k)
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(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
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(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b, c) 植物体、(d) 標本:乾燥時、(e) 標本:湿時、(f) 乾燥時、(g) 湿時、(h, i) 葉、(j) 葉:押しつぶした状態、(k) 葉:KOHで封入、(l, m) 葉身細胞、(n) 翼部、(o) 葉の先端部、(p) 葉の横断面、(q, r) 茎の横断面

 8月に奥日光に出向いたとき、倒れたカンバの樹皮についていたイタチゴケ属 Leucodon の蘚類を持ち帰っていた(alt 1400m)。残念ながら朔をつけた個体は見あたらなかった。
 乾燥すると葉が茎に密着し、湿ると葉の上半部が反り返るように展開する。一次茎は細く樹皮をはい、密集する二次茎は立ち上がって長さ3〜6cmとなり、わずかに分枝する。茎の横断面には中心束があり、表皮細胞は厚膜で小さい。
 二次茎の葉は長さ2.5〜3.2mm、楕円形〜卵形の基部から漸尖して鋭頭、葉面には深い縦皺があり、葉縁は全縁。中肋はない。葉身細胞は、長楕円形〜線形で、長さ35〜55μm、膜はやや厚く、平滑、葉縁近くでは短い。葉の上半部と下部、中央部と縁部近くとでは、葉身細胞の長さがかなり違う。翼部は葉長の1/4〜1/3程度で、葉身細胞は方形で厚壁、平滑。

 朔の状態がわからないので、同定はかなり困難と思われる。平凡社図鑑の検索表からはイタチゴケ L. sapporensis ないしトガリイタチゴケ L. nipponicus と思われる。翼部の展開の仕方、葉上部の葉身細胞の壁の厚さ、発生地域などを考慮すると、トガリイタチゴケの可能性は低い。イタチゴケとしてよさそうだ。