[標本番号:No.1059 採集日:2010/10/14 採集地:高知県、香美市] [和名:ハイヒモゴケ 学名:Meteorium subpolytrichum]
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2011年2月10日(木) |
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(a, b) 植物体、(c) 標本:乾燥時、(d) 標本:湿時、(e, g) 乾燥時、(f, h) 湿時、(i) 葉:湿時と乾燥時、(j) 一次茎の葉と二次茎の葉、(k) 枝葉:サフラニン染色、(l) 枝葉 |
高知県香美市の別府峡で採取したコケの最後の一つを観察した(alt 660m)。岩から垂れ下がる分枝した緑色の丸みを帯びた紐、そんな印象を受けた。一次茎は細く黒色で葉は崩れ、岩を這う。随所から長い二次茎を伸ばし、枝分かれし、覆瓦状に葉をつける。茎の長さは8~10cm、不規則に2~5cm程の長さに紐状の枝をだす。枝には太い部分と細い部分があり、葉を含めた柄の幅は1~2.5mm、わずかに上方に湾曲する。古い枝は黒色となりツヤがある。
葉は舌形~矩形で深く凹み、長さ1.5~2.5mm、基部は耳状となり、先端は急に毛状となり、葉縁には微細な歯があり、乾燥すると縦皺が目立つ。先端の毛状部は長いものと短いものがあり、一次茎の葉では、崩れてほとんど失われている。中肋は葉長の1/2~3/4に及ぶ。
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(m) 枝葉の上半、(n) 枝葉の下半、(o) 葉身細胞、(p) 葉基部の細胞、(q) 葉基部耳の細胞、(r) 茎葉の先端、(s) 枝葉の先端、(t) 枝葉の横断面、(u) 茎葉の横断面、(v) 枝葉の縁、(w) 枝葉の突起:折り曲げた縁、(x) 枝の横断面 |
葉身細胞は菱形~長楕円形で、葉の中央部で長さ20~30μm、葉基部の中肋近くでは長楕円形~線状となり、長さ30~60μmとなり、中央には顕著な乳頭がある。葉身細胞の乳頭は葉面の背腹にあるが、背面側に多く、腹面側では少ない。葉基部の中肋付近の長い葉身細胞には乳頭がほとんどない。茎や枝の横断面には弱い中心束があり、表皮細胞は厚壁で小さい。
朔をつけた個体はなかった。葉の観察にあたって、スライドグラス上に並べてみると、先端の毛状部がわかりにくいのでサフラニンで染色して撮影した。
ハイヒモゴケ科 Meteoriaceae ハイヒモゴケ属 Meteorium の蘚類だろう。平凡社図鑑の検索表からはハイヒモゴケ M. subpolytrichum となる。本標本では、葉先の毛状部の長さが図鑑の解説と異なって、さほど長くない。中には毛状部がほとんどなく、狭い二等辺三角形となって終わっている葉もかなりある(r)。その他の形質状態は観察結果とほぼ符合する。
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