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[標本番号:No.1073   採集日:2010/10/15   採集地:徳島県、那珂町]
[和名:オオハリガネゴケ   学名:Bryum pseudotriquetrum]
 
2011年2月13日()
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
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(a) 植物体、(b) 標本:乾燥時、(c) 標本:湿時、(d) 乾燥時、(e) 湿時、(f) 茎上部の無性芽群、(g) 茎下部の仮根群、(h, i, j) 葉、(k) 葉縁の舷、(l) 葉身細胞、(m) 葉の先端、(n) 葉の基部、(o) 葉と茎の横断面、(p) 葉の横断面、(q) 茎の横断面、(r) 無性芽と仮根

 徳島県那珂町にある四季美谷温泉の駐車場脇にジャゴケの間からハリガネゴケ属 Bryum の蘚類がでていた(alt 660m)。茎は長さ3.5〜6cm、下部には仮根が密生し、上部には無性芽が密集し、葉を上部から下部までほぼ均一につけ、上部の葉は小さい。乾燥すると葉は軽く縮んで捻れ、茎に軽く密着気味となるる。
 葉は長さ2〜3mm、卵形〜卵状楕円形で中部以下が最も幅広で、先端は短く尖り、葉縁には明瞭な舷があり、下部で狭く反曲し、基部は細く茎に下延する。中肋は葉先に達し、突出するものもあり、古い葉では赤褐色となる。葉身細胞は扁平な六角形で、葉の中央部では長さ35〜70μm、幅20〜30μm、薄膜で表面は平滑。葉の基部の葉身細胞は長い矩形で、長さ60〜100μm、幅17〜25μm。葉の横断面で、中肋中心部の細胞は厚壁で小さく、腹背の細胞は大きく薄膜で、腹側の細胞がやや大きい。横断面で舷の細胞は一層で小さくやや厚膜。茎の横断面には中心束があり、表皮細胞は薄膜で髄部よりやや小さい。無性芽は糸状で随所で分枝する。

 ハリガネゴケ属のオオハリガネゴケ B. pseudotriquetrum に間違いなさそうだ。念のために、平凡社図鑑、保育社図鑑、Noguchi(Part2 p.474)をみると、概ね観察結果と符合する。なお、保育社図鑑には葉身細胞の幅だけが記され、長さは記されていない。一方、平凡社図鑑では葉身細胞の長さだけが記されている。両図鑑ともに葉身細胞の壁については「やや厚く,ときにくびれがある」とあるが、本標本の葉身細胞は薄く、膜にくびれは見あたらない。平凡社や保育社の図鑑では茎の長さを「10cmに達し」と記されているが、Noguchiには約3cmとなっている。