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[標本番号:No.1163   採集日:2017/01/18   採集地:栃木県、真岡市]
[和名:コバノイトゴケ   学名:Haplohymenium pseudo-triste]
 
2017年3月24日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
(d)
(e)
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(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
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(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
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(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c, d) 乾燥時、(e, f) 湿時、(g〜i) 枝葉、(j) 葉の基部、(k) 葉の先端:表面、(l) 葉の先端:輪郭部、(m) 葉の中央部:表面、(n) 葉の中央部:輪郭部、(o) 葉の縁、(p) 葉身細胞、(q) 葉の断面、(r) 枝の断面

 1月18日に宇都宮市の南側に隣接する真岡市の井頭公園でソメイヨシノの樹幹に着生していたコケを採集したが、そのまま放置してあった。現地では生態写真は撮っていなかった。
 乾燥していたので葉が茎に密着して、糸が絡み合ったような暗い緑色の群落をなしていた。湿ると葉は広く展開して明るい色になる。茎は這い不規則に分枝し、枝は葉を含めて幅は乾燥時0.3〜0.6mm、湿時1.0〜1.5mm。枝葉は卵型の基部から急に細くなって舌形に伸び、長さ0.4〜0.4mm、先端は円頭から幅広の鋭頭で、脆くて簡単に折れたり千切れる。中肋は一本で葉の中央付近まで伸びる。
 葉身細胞は方形〜楕円形〜六角形で、長さ12〜18μm、幅6〜15μm、表面に数個の小さな乳頭がある。茎や枝の断面に中心束はなく、表皮は厚膜の小さな細胞からなる。朔をつけたものはみあたらなかった。

 イワイトゴケ属(Haplohymenium)に間違いなさそうだ。保育社図鑑の検索表からはイワイトゴケないしコバノイトゴケに落ちる。しかしイワイトゴケは一般に山地にみられるとある。さらにほかの図鑑などでコバノイトゴケは低地の平野部に広くみられるとある。市街地の都市公園で見られたことから、ここではコバノイトゴケとして扱った。これで1月18日に採取したコケは一段落した。