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[標本番号:No.1170   採集日:2017/03/29   採集地:栃木県、日光市]
[和名:ヒョウタンゴケ   学名:Funaria hygrometrica]
 
2017年4月12日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a, b) 植物体、(c) 胞子体、(d) 植物体と朔柄基部、(e, f) 葉、(g) 葉の先端、(h) 葉の中央部、(i) 葉の基部、(j) 葉身細胞、(k) 葉の断面、(l) 中肋付近の断面

 3月末に朝の散歩の途中で歩道脇の砂利でヒョウタンゴケの群落に出会った。朔を多数つけていたが、全体に胞子体は未成熟で、蓋の外れたものは全くなかった。帽をかぶった朔はまだ小さく蓋と朔歯の分離は全く不可能だったので取り上げなかった。ヒョウタンゴケと認識してそばでじっくり見たのは10年ぶりくらいのことだった。そこで、少していねいに観察してみた。

 茎はとても短く高さ5〜8mm、上方に葉が集まってついている。葉は長卵型で深く凹み、先端は細く、基部から伸びた中肋が葉先から短く突出する。葉は全縁だが縁の細胞は細長い楔形をし、独特の並びをして、葉中央部の細胞とは形が違う。
 葉身細胞は矩形〜六角形、平滑で薄膜、幅25〜40μm、長さ30〜50μm。基部の葉身細胞は長い矩形で長さ120μmに及ぶ。葉中央部の細胞には多数の葉緑体があるが、基部の細胞には少ない。葉の断面で、中肋にはステライドがみられる。
 

 
 
(m)
(m)
(n)
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(o)
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(p)
(p)
(q)
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(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(y)
(y)
(z)
(z)
(aa)
(aa)
(ab)
(ab)
(ac)
(ac)
(ad)
(ad)
(m) 乾燥した胞子体、(n) 朔:乾燥時、(o) 朔:湿時、(p) 蓋を外した朔、(q) 蓋の上から見た朔歯、(r) 朔と蓋、(s) 口環、(t) 朔柄の断面、(u) 胞子、(v, w) 蓋の表面、(x) 朔歯、(y) 朔歯の基部、(z) 朔歯の先端、(aa) 朔の基部の気孔、(ab) 気孔、(ac) 葉の基部の造精器?、(ad) 造精器?

 朔は傾き、西洋梨型で、非相称で、柄の頂端近くで下向きに曲がる。新しいうちは黄緑色だが、十分成熟したり古くなると黄褐色になる。若いうちは細長いくちばし状の帽をかぶって上を向いている。朔の蓋は皿状あるいは球面状で、口環がよく発達している。蓋は一層の細胞からなり左巻きに整然と並ぶ。湿っていると蓋は半透明でその下側の外朔歯が透けて見える。
 朔歯は二重だが、内朔歯は短く淡黄褐色で、外朔歯に隠れて明瞭には捉えられなかった。外朔歯は細長い三角形でねじれ、全体で螺旋形をなしている。外朔歯の表面には隆起した横筋とそれらの間に縦に細い条線が密集し、表面には小さな乳頭があり、先端は細く明瞭な乳頭に覆われた関節状となっている。胞子は球形で径10〜20μm。葉の基部に造精器と見られる組織がついたものが多数ある。これは側糸とともに8〜12個ほどが束生している。

 このヒョウタンゴケ群落は、全く別種の蘚類とみごとに混生していた。その蘚類は披針形の葉をもち、葉身細胞が非常に小さな矩形で厚膜だった。うまく選り分けていかないと、まるでヒョウタンゴケの若い芽であるかのようにすら見えた。今回出会ったヒョウタンゴケは全体に若く、自然に蓋の外れた朔歯ひとつとしてなかった。無理やり蓋を外したために、整った姿の外朔歯の画像は得られなかった。また、内朔歯についてもうまく取り外すことはできなかった。