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[標本番号:No.1172   採集日:2017/03/30   採集地:栃木県、塩谷町]
[和名:リボンゴケ   学名:Neckeropsis nitidula]
 
2017年4月21日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
(g)
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(h)
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(i)
(i)
(j)
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(k)
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(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
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(o)
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(a) 発生環境、(b, c, d) 植物体、(e) 標本、(f) 二次茎部を拡大、(g, h) 葉:ルーペにて、(i) 葉:顕微鏡低倍率、(j) 葉の上半部、(k) 葉先端部の細胞、(l) 葉中央部の細胞、(m) 葉基部の細胞、(n) 葉の断面、(o) 二次茎の断面

 塩谷町の佐貫石仏は岸壁に刻まれた大日如来の磨崖仏で国の史跡に指定されている。その石仏の刻まれた面の側面から裏側にも崖は続いている。そこでいくつかのコケを採取した。そのうちの一つ、リボンゴケあるいはヤマトヒラゴケと思われる蘚類を観察してみた。

 一次茎は岩にへばりつき、二次茎は長さ1〜4cm、やや羽状にわずかに側方に枝を出すが、中にはほとんど枝分かれしない二次茎もある。二次茎は強い光沢をもった葉を扁平につけ、葉を含めた幅は2〜3mm。葉は長さ2〜2.5mm、幅1〜1.2mm、へら状で非相称、しわはなく、乾いても縮れない。葉の上半部の縁には微歯があり、先端には短い突起があり、多くの葉で基部の片側の葉は強く内曲する。中肋は弱く葉の中央部あたりで終わる。
 葉身細胞は葉の上部から中央部では楕円形から菱形で、長さ10〜30μm、葉の基部では長い菱形から矩形で、長さ30〜40μm、膜はやや厚く平滑で、基部の膜にはくびれも見られる。二次茎の断面で、表皮細胞は厚膜で小さく、内部の細胞は薄膜で大きく、中心束のようなものは見られない。

 朔をつけた個体は見つけられなかったので、気孔や口環の有無、朔歯の様子などは確認できなかった。形態からはリボンゴケにもヤマトヒラゴケにも見える。枝先の葉はさほど小さくならず、鞭枝のようになってものはほとんど見られないので、ここではリボンゴケとして扱うことにした。
 [memo]
  リボンゴケ属  : 朔に気孔も口環もない。外朔歯は全体がパピラに覆われる。
  ヤマトヒラゴケ属: 朔には気孔と口環がある。外朔歯の上半部だけにパピラがある。

 この標本を採取した場所は自宅から車で10数分の比較的近い場所にあるので、そのうちに朔の確認もできる可能性が大きい。そこで改めて同定してリボンゴケでよいのか、あるいはヤマトヒラゴケなのか確認してみたい。