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[標本番号:No.1177   採集日:2017/04/03   採集地:栃木県、栃木市]
[和名:カヤゴケ   学名:Rhynchostegium inclinatum]
 
2017年5月27日(土)
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
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(a, b) 発生環境、(c) 植物体、(d) 標本、(e) 乾燥時、(f) 湿時、(g) 葉、(h) 茎葉、(i) 枝葉、(j) 葉の先端、(k) 葉の基部、(l) 葉身細胞

 先月初めに栃木県の満願寺奥の院周辺の石灯籠の礎石に這いつくばるようについていたコケをようやく観察した。
 植物体は小型で丈夫、密な叢生状をなし、わずかに光沢がある。茎は伸びて匍匐し、不規則に羽状に分枝し、茎の随所から仮根をだして基物にへばりつく。葉は多少扁平につく。茎葉は卵状披針形で、先端は多少広く尖る。枝葉は茎葉とほと同様の形状でやや小さい。葉面は多少凹む。葉には全周にわたって微細な鋸歯があり、枝葉では基部周辺で鋸歯のないものがある。中肋は明瞭でやや強く、葉長の2/3近くまで達する。枝葉では1/2ほどのものもある。葉身細胞は線状〜線状紡錘形で、長さ60〜110μm、幅5〜8μm、平滑で膜は非常に薄い。翼部はあまり発達せず、基部の細胞は矩形となり他の細胞よりも幅広く短い。茎や枝の断面にはやや弱いが中心束が見られる。

 胞子体をつけたものは見当たらず、同定のための決定的な根拠が薄いが、葉が非常に薄く、中肋が一本であり、葉身細胞が非常に細く両端が尖っていることから、アオギヌゴケ科(Brachytheciaceae)のカヤゴケ属(Rhynchostegium)だろうと見当をつけた。ついで、葉先が捻じれる傾向はなく、葉身細胞の長さなどからカヤゴケではあるまいか。