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[標本番号:No.1183   採集日:2017/06/08   採集地:栃木県、日光市]
[和名:ツクシツヤゴケ   学名:Entodon macropodus]
 
2017年6月15日(木)
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
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(k)
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(l)
(l)
(a) 植物体:群落、(b) 植物体:新芽、(c) 標本の一部、(d) 胞子体をつけた標本、(e) 茎葉と枝葉、(f) 茎の背腹面の葉、(g) 茎葉、(h) 枝葉、(i) 葉の先端細胞、(j) 葉中央部の細胞、(k) 翼部の細胞、(l) 葉の断面

 今月の8日に日光だいや川公園にきのこの定点観察に行った折に、2点ほどのコケを採取していた。そのうちに一つを今日ようやく観察した。コナラの根もとに純群落を作って広がり、黄緑色の新芽がよく目立っていた。一部に胞子体をつけたものも見られた。この仲間は胞子体がないと同定が難しいものが多いので、胞子体をつけた個体の周辺を中心に採取した。

 茎は長さ3〜6cm、ややまばらに水平気味に枝を出す。その枝からはさらに短い枝をだすものもある。茎葉も枝葉も扁平につき、乾燥しても縮れたり茎に密着したりせず、乾湿であまり変化はない。茎は葉を含めて幅1.2〜2mm、枝は葉を含めて1〜1.5mm、新芽の部分の枝では1.5〜2.2mm。葉は楕円状卵形〜広い卵型で、茎葉は長さ1.8〜2.8mm、枝葉は長さ1.2〜2mm、新芽の葉は1.5〜2mm、先端は急に細く尖る。茎や枝の側面にでる葉は非相称で、一方の縁が内曲するが、背腹面にでる葉は相称で縁は内曲しない。葉縁はほぼ全縁だが、先端付近にわずかに小さな歯がある。中肋は二本で非常に短く葉の横断面で2〜4細胞の厚さだが、茎葉では中肋が全くないものもある。葉身細胞は線形で幅4〜7μm、長さ45〜70μm、薄膜で平滑、先端部では長さ20〜35μm、翼部には多くの方形細胞が密に並び、幅は60〜100μm、長さ70〜140μm。
 

 
 
(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
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(s)
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(t)
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(u)
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(v)
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(w)
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(x)
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(m) 茎の断面、(n) 若い茎の断面、(o) 朔、(p) 蓋と朔、(q) 朔歯、(r) 朔歯、(s) 朔歯:外側から、(t) 外朔歯基部、(u) 朔歯:内側から、(v) 外朔歯先端、(w) 朔の気孔がある部分、(x) 気孔

 茎の断面で表皮の細胞は厚膜で小さく、内部の細胞は薄膜で大きく、弱い中心束が見られる。若い茎では外皮の細胞はあまり厚くない。
 朔柄は黄色〜黄褐色で長く、2〜3.5cmに達し、円筒形で直立する朔を相称につけ、口環はない。朔は長さ2mmに達する。朔の蓋には長い嘴がある。朔歯は二重。外朔歯は線状披針形で16枚、内朔歯は線状で顕著な縦条があり基礎膜のようなものは見られない。外朔歯の基部表面は微粒が見られる。朔の基部には気孔がある。

 今回は苞葉や朔柄の断面などは観察しなかった。朔歯は二重だがちょっとみたところ、内朔歯がないかのようにみえる。よくよく見ると発達の悪い内朔歯が朔の口から直接線状に出ていた。葉に艶があり、朔柄が長く、朔が相称で直立し、口環がないところからツクシツヤゴケ Entodon macropodus と判断した。それにしても、この仲間は胞子体がない場合、同定はかなり難しい。