Top  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.1184   採集日:2017/06/08   採集地:栃木県、日光市]
[和名:ナガバチジレゴケ   学名:Ptycomitrium linearifolium]
 
2017年6月21日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a) 岩上に発生、(b) 植物体、(c) 標本:乾燥時、(d) 標本:湿時、(e) 朔と葉、(f) 葉、(g) 葉の先端、(h) 葉の中央部、(i) 葉の基部、(j) 葉身細胞、(k) 葉基部の葉身細胞、(l) 葉の断面、(m) 胞子体、(n) 朔、(o) 朔歯、(p) 朔歯、(q) 朔歯の基部、(r) 雄花序

 日光だいや川公園で今月8日に採取したコケ2点のうちの残りの一つを観察した。遊歩道脇の岩に丸い塊がいくつもつながったような群落を作っていた。茎は分枝し、長さ2〜3cm、乾くと葉が強く巻縮する。葉は長さ4〜5mm、卵型の基部から長い線形に伸び、葉縁の上半には数細胞からなる鋸歯がある。中肋は葉頂近くで消え、断面で中央にガイドセルが並び、背腹両面にステライドがある。葉中央部の葉身細胞は円形〜角丸の方形で、内腔の径は6〜10μm、壁は平滑で厚い。葉上部の縁では2〜3層になっている。葉基部は鞘状となり、細胞は方形で幅10〜12μm、長さ40〜60μm、壁はやや薄い。
 胞子体は枝の途中、雌苞葉の中から1〜3本ほど出て、朔柄は黄色〜黄褐色で長さ3〜6mm、朔は相称で直立し、筒状で長さ1.5mm前後。朔歯は一重で16枚、披針形で二裂し、表面は微細な疣で覆われる。雌苞葉の内側、朔柄の基部の近くには1〜2つの雄の小枝がある。

 朔歯が一重で、葉が卵状披針形、葉身細胞が方形で厚壁、基部で長く大きくなり、乾いた岩上に生育することから、ギボウシゴケ科のコケだろう。平凡社図鑑の検索表にあたると、胞子体基部に鞘に接して雄小枝があるからチジレゴケ属のようだ。次いでチジレゴケ属の検索表にあたると、葉の上半部の縁に鋸歯があり、葉は披針形で、朔柄が短いことから、ナガバチジレゴケ Ptycomitrium linearifolium に落ちる。種の解説を読むと観察結果とほぼ符合する。なお、保育者図鑑ではイシノウエノヒダゴケという和名が与えられている。