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[標本番号:No.1206   採集日:2017/07/17   採集地:宮城県、栗原市]
[和名:オオミズゴケ   学名:Sphagnum palustre]
 
2017年11月30日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a, b) 植物体、(c) 標本、(d, e) 開出枝と下垂枝、(f) 茎と茎葉、(g, h) 茎葉、(i) 茎葉の上部、(j) 茎葉の中央部、(k) 茎葉の下部、(l) 茎葉の断面

 四ヶ月ほど前の7月17日に宮城県の栗駒山に登った。その折に麓の「世界谷地」近くの湿原でミズゴケの仲間を何点か採取した。その直後からきのこのRDB関連調査でずっと忙しくて、標本をチャック付きポリ袋に入れたまま冷蔵庫に放置したままになっていた。
 今シーズンのきのこ調査は既に終わり、記録の処理なども一段落したので、ようやくこの時のミズゴケを観察することにした。長いこと中断していたコケ観察を始めたのは今年の1月だが(たわごと2017.1.8)、自宅の近郊で採取したこけを主体に観察練習から始めて、きのこ調査の合間にすこしずつ観察し覚書に残してきた。ミズゴケは観察ポイントが多いので後回しになり、これまでずっと放置の状態となっていた。同定のためだけの記録ならば、ごく一部の重要なポイントだけを観察すれば済むが、それでは後日の役には立ちにくい。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(m) 茎の表皮細胞、(n) 茎の断面、(o) 枝葉、(p) 枝葉の背面上部、(q) 枝葉の背面中央、(r) 枝葉の背面基部、(s) 枝葉の腹面上部、(t) 枝葉の腹面中央、(u) 枝葉の腹面基部、(v, w) 枝葉の断面:左側が腹面、(x) 枝の断面

 このミズゴケは、最初に茎の表皮細胞を見て(m)、次に枝葉の断面を切り出してみて(v, w)、すぐにオオミズゴケ Sphagnum palustre であると同定できた。そしてオオミズゴケは過去に何度も詳細な観察記録を残しているので、ここでは特徴的な各部の顕微鏡写真などを掲げるだけで、各部の形やサイズなどについてはあえて記さなかった。

 なお、ミズゴケの同定には2007年に行われた「岡山理科大学自然植物園主催 第3回自然環境調査技術研修会 ―ミズゴケを同定する―」のテキストに準拠した。この資料の検索と種の記載にあるスケッチを、上に掲げた写真と比較することによって各種の特徴が明瞭になると思う。この資料はミズゴケ同定のバイブルのような存在だ。改めて西村直樹先生に感謝します。