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[標本番号:No.1210   採集日:2017/12/03   採集地:栃木県、日光市]
[和名:ハタケゴケ   学名:Riccia glauca]
 
2017年12月5日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b) 植物体、(c) 若い株、(d) 老成した株、(e) 若い株を拡大、(f) 老いた株を拡大、(g, h) 若い株の裏面、(i) 断面をルーペで見る、(j) 断面:顕微鏡、(k) 断面:上層部、(l) 断面の一部、(m) 表面、(n) 表面の拡大、(o, p) 仮根、(q, r) 仮根:サフラニン染色

 先日ハタケゴケの仲間を持ち帰ったものの、うっかり室内にそのまま放置してしまい、すっかり乾燥しきってまるで千切ったティッシュペーパーのようになってしまい、全く観察には絶えなかった(たわごと2017.12.2)。なんとも悔しいので、一昨日足元に注意しながら自宅の近所を歩いてみた。何のことはない、自宅から300mほど離れた杉野沢グラウンドのゲートボール場の縁に、同じようなハタケゴケの仲間が十数メートルにわたって群生していた(a, b)。先日見たものとは違って、まだ緑色の比較的若いコケも混じっていた(c)。
 群生していたコケの大部分はすでにかなり白色を帯びて、老成していたが(d, f)、今回は若い株も得られたので(c, e)、これらを素材にしてじっくり観察してみた。観察のあと、新鮮な標本(c)を一晩室内に放置したら、これまたすっかり色や形が変化していた。もう一日経ったら全体がさらに白くなっていて、もはや内部構造の観察には耐えられない状態になっていた。

 コケは日当りのよい裸地に円形から半円形のコロニーを作ってそれらが密集して出ていた。葉状体は幅1〜3mmで、大部分が二叉状に分かれている。葉状体の中央部は樋のような形となって窪み先端ほど深くなっている。濡れていなくても表面は光を反射してよく光っている。表面を高倍率ルーペでいくら探しても気室孔は見当たらなかった。
 断面を見るとみごとに柵上に並んだ細胞群があり(j)、先端及びほとんどの二番目の細胞には葉緑体が全く見られない(k)。これが表面を白色で濡れたような状態を作り出しているようだ。また組織内部に深く沈んだ位置に生殖器らしき構造が見られる(j, l)。植物体の表面を薄く切って顕微鏡で見ると球形の細胞がハニカム構造のように整然と並んで見える。
 標本の裏面を見ると腹鱗片があるようにも見えるがその姿は淡色で明瞭には捉えられなかった。仮根の大部分は有紋で、無紋の仮根は短いものがわずかにみられるだけだった。念のためにサフラニンでも染色したが、腹鱗片同様に無紋の仮根は明瞭には捉えられなかった。

 採取から室内放置をして二日ほど経ってから改めて、腹面の腹鱗片の様子を確認しようと試みたが、全くの徒労に終わった。腹鱗片の観察は新鮮な個体でないと難しいのかもしれない。