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2007年12月13日(木)
 
使い捨て注射器の威力
 
 葉の横断面切り出しには、実体鏡が不可欠だと思っている人が多いようだ。やっとのことで高価な顕微鏡を購入したというのに、とても実体鏡までは購入できない、という意見もよく聞く。では、実体鏡がなければ、葉の横断面切り出しはできないのかというと、そんなことはない。ピスを使えば楽にできる。ピスとはニワトコやヤマブキの髄である。
 保育社『原色日本蘚苔類図鑑』は、実体鏡を用いた切片作成を詳細に紹介しているが、ピスを使って切り出す方法についても触れている(p.379〜)。ただ、ピスを指で摘んで、薄片を切り出すのは、思いの外難しい。そこで、昔から卓上ハンドミクロトームが使われてきた。
 
 
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 市販の卓上ハンドミクロトームは6〜7万円と高価である。安い実体顕微鏡が買える価格だ。何もこういった道具を買わなくてもよい。使い捨て注射器(a)は、ほんのわずかな手数で、直ちに簡易ミクロトームに変身する(a〜c)。価格も100〜150円程度だ。
 ピスの太さを考えると、2.5mLの注射器が適している。先端部の切り落としは、カッターを熱すれば楽に切れる。ピスは内径に近いサイズを選ぶとよい(d)。刃物は、片刃カミソリや柄付きカミソリなどが使いやすい(e〜g)。注射器の外から虫ピンを刺せばピスを固定できる(h)。
 横断切片の作成は、日常的にはたいてい実体鏡の下で、両刃カミソリを使って行っているが、簡易ミクロトームもよく使う。上記の4点(i〜l)の横断切片は、いずれも注射器を使った簡易ミクロトームで切り出したものだ。(l)はまとめて切り出し、低倍率でみたもの。