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2017年5月25日(木) コケは待ってくれるがキノコは待ってくれない
 今年の4月以降に採取したコケ標本が、採集袋に入ったままの状態で18点ほど溜まってしまった。これらのうち苔類は4点ほどだが、油体の観察だけは採集直後に済ませてある。しかし蘚類についてはまだ何も見ていない。採集したコケ標本を紙袋に入れたままで室内に放置しても、よほどのことがない限り数か月間はカビや虫にやられてダメになってしまうことはない。よしんば、その標本を失ったり損壊してしまっても、採取場所を正確に記録してあれば、比較的簡単に同じ種のサンプルを得ることができる。
 一方キノコは一部の硬質菌を別として、採集直後からすぐに腐敗が始まる。一刻も早く壊れないように持ち帰って、直ちに詳細な観察をする必要がある。特定のキノコが発生したという情報を得てすぐに現地に赴いても、既に萎れきっていたり、溶けていて形を失っていることも多い。出会えるか否か、採集できるか否かは偶然に左右される要素が非常に大きい。そして、持ち帰ったキノコは、一時的には冷蔵庫で保存可能な種もあるが、それも数日が限度で、たいていは直ちに熱乾燥するなり冷凍乾燥しなくてはならない。
 要するにコケは待ってくれるが、キノコは待ってくれない。今年度いっぱいは絶滅危惧種の調査員としての責務もあり、観察や同定作業に多くの時間をとられる。今年2月からの観察練習のおかげで少しずつコケに対する勘が戻りつつある。新たな標本に手を染めるのは、手許の標本を減らしてからということになる。まぁ当面は亀の歩みのコケ観察になりそうだ。