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2008年2月25日(月)
 
ヒマラヤナンジャモンジャゴケ
 
 一昨日国立科学博物館新宿分館で行われた「自然史セミナー コケ類の分類」講座のおり、観察したのはナンジャモンジャゴケ Takakia lepidozioides だけではなく、ヒマラヤナンジャモンジャゴケ T. ceratophylla もじっくりとみることができた。観察メモを残しておくことにした。
 受講生に提供された標本は、同時に提供されたナンジャモンジャゴケ標本よりも大きく、長さは、1.5〜2.5cmほどあった(a, b)。茎の上部に棒状の葉が密集し、長い茎の下部には粘液毛があちこちに付いていた。ちょっとみただけでは、大きさが違うだけで、ナンジャモンジャゴケとの違いは全くわからない。ナンジャモンジャゴケと違って、葉は茎にしっかりついている。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 一本を採りだして先端部(c)、中央部(d)、下部(e)をじっくりと観察した。葉腋や茎の下部には粘液毛がある(f)。葉腋の粘液毛は散発的だが、茎の下部のものは多数が密集している。葉は丸い棒状で、数本がまとまって茎からでている(g)。茎の表皮細胞は厚壁の矩形をしている(h)。葉の先端部の様子はナンジャモンジャゴケとよく似ている(i)。
 葉の横断面(j)をみると、細胞の壁が厚く、ナンジャモンジャゴケの表皮細胞とはかなり違う。葉の横断面を構成する細胞の数も多い。茎の横断面(k)も同様に、ナンジャモンジャゴケの茎の細胞と比較して、厚壁の細胞が表皮を構成している。粘液毛(l)にも違いがあるというが、ナンジャモンジャゴケの粘液毛との違いはよく分からなかった。資料の検索表によれば、葉腋の粘液毛同士を比較すると差異があるようだ。

 この属は世界中に2種が知られ、日本ではナンジャモンジャゴケ T. lepidozioides だけが発見され、ヒマラヤナンジャモンジャゴケ T. ceratophylla は見つかっていないという。また、染色体数はナンジャモンジャゴケでは n=4で、ヒマラヤナンジャモンジャゴケでは n=5だという。確かに、この属の二つの種は、葉や茎の横断面を観察すると、一目瞭然に区別できる。植物体の大きさや葉の密度などは、種を区別する形質としては使えないそうだ。

 コウボウフデという奇妙な姿をしたきのこがある。環境省のレッドデータブックでも絶滅危惧種に指定され、産地は少なく比較的珍しいきのことされている。このきのこは、1954年に川村清一によって担子菌類ケシボウズタケ門の一種として報告された。
 長いこと担子菌とされ誰も疑うことなく50年以上が経過したが、近年になって消失性の子嚢が発見され、2001年になってはじめて、担子菌ではなく子嚢菌のツチダンゴの仲間であると発表された。最近のことでもあり、子嚢菌の位置に配置された図鑑はまだ数えるほどしかなく、多くのきのこ図鑑ではいまだに担子菌の腹菌類のところに掲載されている。
 ナンジャモンジャゴケがタイ類から蘚類に移されたのが極めて異例だったように、コウボウフデも担子菌から子嚢菌に移されるという、異例の経過をたどることになった。コウボウフデの子嚢菌への移行に関わった者の一人として、ナンジャモンジャゴケには、他の蘚苔類とは違った意味で、特別な思いがある。是非とも、自分の目で新たな産地を見つけたいと思う。