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2019年7月19日(金) はきだめばかりでこごめがない ?!?!
 カミコン(亡妻)の生前には、二人揃って朝の散歩をするのが常だった。日光に転居してからは、散歩途中で道の脇を見ては時折なぞのようなセリフをつぶやいていた。「はきだめばかりでこごめがない」。あるいは「おおばはあるけれどひげがない」、「こばかりでみどりがすくない」など。何を言っているのかよくわからなかったが、また何か呟いているな程度に思っていたので、特に尋ねることはしなかった。
 彼女が亡くなったあと、遺品のバックの中から主婦の友社「山野草 ポケット図鑑」がでてきた。思い返せばどこに出かけるにもいつも数冊の山野草のポケット図鑑とルーペをを必ず持ち歩いていたっけ。休憩時にはたいていそれらのページを開いていた。
 そういえば、カミコンは野草が好きで草花の名前を実によく知っていた。自宅には平凡社「日本の野生植物 I, II, III」やら山渓「日本の野草」をはじめ、山野草のポケット図鑑が7〜8冊ある。いわき市に住んでいた時には大部の牧野図鑑シリーズもあったが、日光の狭い家に転居するにあたり、苦渋の思いで知人に譲ってしまった。
 
(a)
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(b)
(b)
(c)
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(d)
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(e)
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(f)
(f)
 最近になって朝の散歩の折に、ふと道の脇をみるとハキダメギクがいたるところに広範囲に広がっていることに気づいた(a〜d)。頭花(d)をばらして撮影した写真(e)は舌状花(左側)と筒状花(右側)だ。写真(f)は乾燥して冠毛が広がった状態を撮影した。
 そういえば川口市に住んでいた時、ハキダメギクとコゴメギクを持ち帰って、ふたりで実体鏡で冠毛の有無を確認したことがあった。この両種は肉眼だけではいずれなのかよくわからないことがしばしばある。決定的なのは舌状花に冠毛があるか否かをチェックすることで、コゴメギクの舌状花には冠毛がない。しかし花の径が5mm程度なので、現地でルーペで見てもわからないことも多かった。そこで自宅でピンセットを使ってガッチリついた総苞片を剥がして舌状花をむき出しにして確認したわけだ。
 川口時代にもいわき時代にも6〜10月頃だと、普通に歩いていれば、ハキダメギクにもコゴメギクにもよくであったものだった。しかし、日光に転居してからはなぜかいまだ一度もコゴメギクを見ていない。そのことは時折話題に上った。
 それでようやく彼女の呟きの意味に気づいた。「はきだめばかりでこごめがない」とはコゴメギクが見られないということだったのか。
 他の謎の呟きも朝の散歩の折に野草を見ながら歩いていてわかった。「おおばはあるけれどひげがない」はオオバジャノヒゲはよく見かけるがジャノヒゲはあまり見かけないことをいっていたのだろう。「こばかりでみどりがすくない」はコハコベはとても多いがミドリハコベがわずかしか見られないということだったのだろう。