2002年7月8日(月)
[その2]

 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 日光から帰宅する途中で一休みするために駐車場で体を伸ばした。車外にでて芝生や生け垣のある周辺を歩くと、足下に柄が青変したきのこ(c, d)が捨ててあった。付近をみると成菌(a)や若い菌(b)がいくつも束生している。カメラを思いっきり近づけて柄の根元(e)と柄表面(f)も撮影した。傘には粘性が無く円錐状から丸山型をしている。湿った部分でも傘の縁には条線などはみられない。柄にはツバはなく中空で表面は絹状光沢を帯び触れると青変する。柄の根元には白毛が生えている。胞子紋は淡い紫褐色をしている。
 捨ててあった一株を素材にして素性を調べてみた。ヒダを切り出し(g)てよく見る(h)とヒダ実質は並行型をしており、傘縁から中心にまでたっするヒダには側シスチジアはない。しかし、短い小ヒダ(i)には側シスチジア(k)がみられる。長いヒダ(g, h)にも小ヒダ(i)にも縁シスチジア(j)はあるが、その先端に分岐は全くみられない。さらに小ヒダにしか側シスチジアはみられなかった。胞子はやや多角形気味の卵形楕円形で発芽孔をもっている。スケールは1目盛りが1μmだから、5.5〜7×3.5〜4μmほどのサイズだろうか。なお傘の表皮層は細い繊維状の細胞からなっている。
 側シスチジアがあるのでアイセンボンタケでもアイゾメシバフタケでもなさそうだ。傘の形やら縁シスチジアの形からオオシビレタケやらヒカゲシビレタケの線も消える。ただPsilocybeの仲間には間違いなさそうだ。
 この仲間のきのこには新たに法規制の枠がかかってしまったものが多数含まれるので、これからは採取・標本保持には注意が必要だ。シロシビンを含むきのことの認識は全くなくても、調べてみた結果規制該当種となることはありうる。単純所持が処罰の対象となってしまったので、知らずに採取しても処罰されることがありうるわけだ。観察したあとこのきのこは焼却処分した。馬鹿馬鹿しいが、プレパラートも胞子紋も処分した。
 ただでさえ、菌学そのものが海外の研究レベルから大きな遅れをとっているのだから、今後Psilocybe属の研究はますます停滞していくことになるだろう。そしてPsilocybe属やPanaeolus属の多くが今後は絶滅危惧種に追いやられていくことになるのだろうか。

日( )