2003年3月30日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 トガリアミガサタケの完熟個体がどうやら採取できたので、切片(a)を作って覗いて楽しんだ。胞子はとても大きく低倍率でみてもそのひょうきんな姿(c)を捉えることができる。何ともひょうきんに見えるのは、両端に小さな油球が多数ついているからだろう。
 完熟した成菌でも、まれにこのミニ油球群がみあたらないものもあるが、ほとんどのアミガサタケ類の胞子にみることができる。子嚢の先端付近(d)を見てもそのミニ油球は明瞭にわかる。ただ、このミニ油球群は未熟個体ではほとんど見られない。胞子は対物油浸100倍にすると大きすぎて全体に焦点を合わせることはできないが、ミニ油球が膜の外側に漂っている様子がよくわかる(f)。アミガサタケの仲間は他の子嚢菌に比べると側糸がとても太い(b)。側糸には隔壁がいくつもあり根元付近から分岐している(e)。
 国内の多くの図鑑ではこのミニ油球群について言及していない。そのことに前々から疑問を感じていた。というのも1981年刊のスイス菌類図鑑Vol.1では、アミガサタケ類の胞子の記述において「sometimes with small droplets on both ends(outside the spore wall)」とあり、sometimesとはあるがミニ油球群のことが明瞭に記述されている。一方、1987年刊の保育社「原色日本新菌類図鑑2」には参考文献のひとつとして上記スイス菌類図鑑Vol.1が掲げられている。しかし、アミガサタケ類の胞子については「楕円形、鈍頭、無色、平滑」とだけ記述してあって、両端付近に見られる小さな油球群についてはまったく触れていない。
 アミガサタケ類では、姿はかなり大きくても未熟個体があり(3月21日 雑記)、一方で小さくても完熟個体がある。大きな姿をしているにもかかわらず、一晩放置しても胞子紋がまったく採れないものがある。しかし小さくても完熟個体では一晩も放置すればかならず胞子紋の堆積をみることができる。上記の疑問を解く鍵はこのあたりにあるような気がしている。

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