2004年5月30日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 5月16日に生田緑地でチャワンタケ(a)を預けられてしまった。雑木林の泥の上からでていた紅色の小さなものだ。径8〜20mmで柄を持たず、子嚢盤は厚いところで2mmほどあった。現地には5〜6個の群生が多数見られた。当日は、昼前に現地を離れたのだが、目ざとく事務局のGさんに捕まってしまい、このチャワンタケを預けられてしまった。
 ずっとフィルムケースにいれたまま冷蔵庫に放置してあった。ようやく調べてみた。実体鏡でみると子実層は赤く、そのすぐ下の子実下層は橙色であり、白い托髄層はやや厚めで、無柄の托外皮層はやや茶褐色を帯びている(b)。薄く切りだしてみた(c)。子実下層は絡み合い菌組織、托実質は円形菌組織(d)。托外皮層からは茶色の毛が出ている(d, e)。
 子実層を見ると色素顆粒をもち先端がやや膨大した側糸と、子嚢がとても美しい(f)。胞子は表面に粗い編み目のようなものがみえる。メルツァー液を加えると、側糸がアミロイド反応を示すが、子嚢や胞子は非アミロイドである(g)。倍率を上げ、水でマウントした状態で子嚢をみると、胞子の表面の装飾紋はまるでヒロメノトガリアミガサタケの頭部を彷彿とさせる(h)。
 メルツァーで染めた状態のプレパラートでも倍率を上げてみた(i, j)。子嚢に納まった状態のまま、胞子の表面付近(i)と輪郭部(j)に焦点を合わせてみると、胞子がかなり特徴的な装飾紋をもつことがわかる。胞子の乳酸反応試験はしていないが、ベニサラタケとしてよさそうである。
 盤菌類の検索・文献について、そしてこのきのこの同定に関して、国立科学博物館の細矢博士に貴重な示唆とご指導をいただきました。深く感謝いたします。

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