2004年9月18日()
 
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 今月はじめ頃、胞子をつけ基部まで写った担子器の姿をアップした(雑記2004.9.5)。自分の顕微鏡は性能が悪いから、担子器の全体像などは見えない、高性能の顕微鏡を使えば、誰にだってこの程度の映像は簡単に撮影できるはずだ。そういう内容のメールをいくつかいただいた。

 きのこ図鑑などには担子器の全貌が描かれている。こういった図をみると、顕微鏡下ではきっとそういった姿を見ることできるのだろう、そう思っても不思議はない。しかし、胞子や担子器などの大きさに比較して、顕微鏡で焦点の合う範囲というのはとても狭い。
 顕微鏡できちんと焦点があって見える範囲を表す言葉に、客観的焦点深度、主観的焦点深度というものがある。焦点深度の「客観的」とは純粋にレンズの焦点が合う範囲、「主観的」とは人の目の補正能力によって焦点が合う範囲をいう。目で見ている時には、この両者の和が焦点深度として現れる。

 図(1〜6)の(a)は客観的焦点深度であり、(b)は両者の和である。レンズが高倍率になるほどこの幅は狭くなる。目で見ているときには、(b)の厚みまではほぼきちんと焦点があっているように見える。しかし、カメラで撮影するときに焦点が合うのは、この(a)の範囲だけである。ただ、(b)の範囲まではやや甘いがほぼ焦点があっているように見える。
 一方、スライドグラス上でマウント液中に浮いている担子器などは水平状態を保っているわけではない。大部分は傾いた状態ではないだろうか。水平状態でなおかつ他の組織と重なり合わない状態のものは意外と少ないのではないだろうか。
 きのこのヒダなどから最初に切り出す切片が厚いと、組織が何重にもかさなりあって、特定の担子器だけに絞ってみることは難しい。また、厚めの組織をそのまま押しつぶしてしまうと、形は崩れるし、ごちゃごちゃして目的のものを捉えるのが難しい。
 薄い切片を作っても、マウント液の中では多くの担子器は水平を保っていない。だから、頭部に焦点を合わせると(1, 4)基部はボケるし、基部に焦点を合わせると(2, 5)、頭部はボケてしまう。うまく(3)や(6)のような状態のものを見つけることが最初の仕事になる。ところがこういった状態のものは非常に少ない。
 先の担子器の写真は図で言えば(6)のケースということになる。よほど運が良くないとこういう状態の担子器をて撮影できるチャンスというものは少ないのではないか。なお、図(1)〜(6)で「スライドグラス」として図式化したのはガラスの表面付近だけである。

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