2005年12月13日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 12月10日に菌友から西表島の砂浜で採取したというきのこが届いた(a)。柄の基部は砂に包まれている。そのまま取り出して立ててみた(b)。若い菌から成菌まで揃っている。
 まずは、成菌を基準にざっとみた。傘は径15〜40mm、幼時半球系だが成長すると扁平となり中央部が凹む。凹部にはわずかにササクレがみられる。縁は湿時わずかに溝線があり、粘性はない。傘は脆く傘肉も薄い。ヒダはやや疎で垂生〜湾生(c)、柄は3-6mm x 25-35mm、上下同大で表面に縦の条線がある。ツバはない。
 胞子紋は全くとれなかった。わずかに落ちた胞子は、厚膜で発芽孔は不明瞭、非アミロイド(d)。表面は軽い疎面で、KOHで明褐色になる。ヒダはいずれも縁部が崩れている(e)。砂がヒダの縁を削ってしまったようだ。側シスチジアはなく、ヒダ実質は並列型(f)。一見、縁シスチジアはないようにみえる(g)が、再度切り出したところ洋梨形のシスチジア様のものがある(h)。担子器基部にクランプはなく4胞子性だが、2胞子性のものもある(i, j)。傘表皮は並行菌糸被で、中央部で立ち上がっている(l)。この部分が微毛のササクレに見えるのだろう。
 砂にまみれたきのこの観察では、常にミクロレベルの砂粒との戦いとなる。微細な砂粒でも鮮明な像を得にくくする。水で洗い落とすにも注意が必要となる。弱い水流では砂粒は落ちない。でも、強い水流を当てると組織表面を削り取っていく。まるでヤスリである。
 砂地生きのこの顕微鏡観察では、採取時から細心の注意が必要だ。できるだけ砂を噛んでいない個体を見つけ、砂にまみれないよう注意して持ちかえる必要がある。筆や水洗いで落ちる程度の砂ならよいが、多くの場合、切片切り出し段階で難儀することになる。
 はて、このきのこ(a〜c)、いったいどの属に落ちるのだろうか。とりあえず熱乾燥に回した。

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