2006年8月17日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 切片作りで実体鏡を使うことはなかった。小さなものを扱う場合、ルーペを手に持って切るか、ピスを用いることが多い。これまでは、このやり方でほとんど用が足りてきた。
 先日鬼怒川遊歩道からミズゴケの仲間を持ち帰った。ミズゴケ類は同定の難しい仲間らしい。とにかく、ひたすら顕微鏡観察である。小さな葉の細胞やら、茎の表皮細胞を細かく観察しないと節レベルにすら到達できない。甘い見通しはたちまちうち砕かれた。
 長さ1mmほどのミズゴケの葉を一枚(a)、ピンセットを使ってピスに挟んだ。目的は横断面での細胞の構造確認である。葉は一層の細胞からなり、厚みは15〜25μm。これより薄く切らねばならない(b)。切り出し幅が葉の厚みを越えていると、切片が倒れてしまい横断面の確認はできない。最初にふだんの要領で切り出すと、なんと50μmもの厚みがあった(c, d)。きのこの子実層托実質やシスチジアの観察であれば、この厚さに切れば充分である。
 単体で断面を出すのは難しいので、複数の葉をピスに挟んで切った。これだと30μmほどの厚みがあっても何とか横断面を確認できる(e)。さらに薄切りにしたい。そこで、一枚だけをピスに挟んでヘッドルーペを被って切り出した(f)。15〜20μm厚、これならば、横断面での透明細胞と緑色細胞との配置などがよく分かる。ウロコミズゴケSphagnum squarrosumのようだ。
 久しぶりに非常にシビアな切片切り出し作業となった。コケでの練習は、そのままきのこにも通用する。視力の低下を痛切に感じるこの頃、実体鏡下での切り出しを練習しなくてはなるまい。実体鏡下での切り出しは難しいが、慣れれば10μm以下に切るのもそう難しことではないという(保育社「原色日本蘚苔類図鑑」p.380)。

日( )
HOME