2007年4月24日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 茨城の神社で出会ったセンボンイチメガサ属のきのこで遊んだ(a)。比較的乾燥していたので、傘を紙に伏せて一晩放置したところ、濃すぎる胞子紋がたっぷりとれた(b)。検鏡のため一部を削いだ。茶褐色系である。帰宅後30分間ほど採取した胞子紋でも色はよくわかる。
 きのこ自体はやや乾燥気味だったが、傘表面に水をかけると粘性があり、傘の縁の条線がはっきりしてきた。ヒダは直生で密、柄の表面にはササクレ状の鱗片があり、ツバの痕跡がある。一部のきのこでは、繊維状〜膜質のツバが残っていた。
 胞子を水と3%KOHで封入してみた(c, d)。KOHでは胞子の色が明るい蜜色となる(d)。外見のよく似たコレラタケの胞子は、片側がやや尖り表面には微疣があるので、顕微鏡を使うと400倍でも充分楽に判定できる。自信がないとき、胞子さえ確認すればかなり安心だ。
 きれいな状態で束生したコレラタケの中には、センボンイチメガサと実によく似た印象を与えるものがある。以前、センボンイチメガサだと思って鍋に放り込もうとしたきのこを、念のために検鏡したところ胞子に疣があったので、慌てて捨てたことがあった。
 ツバを高倍率のルーペでみると、縁シスチジアがあるようにみえる(e)。念のためにヒダを切り出し(f)、先端を見た(g)。側シスチジアを持たないことは直ぐ分かるのだが、ちょっとみたところ、縁シスチジアらしきものがみえない。小さくて子実層に埋もれてしまっているらしい。
 ヒダの縁付近だけを、フロキシンで染めてKOHでバラしてみた。すると偽担子器のような姿の縁シスチジアが多数みられた(i)。そうそう、ひだ実質は並列型、担子器の基部にクランプあり(j)。これも3%KOH+フロキシンでバラした。センボンイチメガサとしてよさそうだ。

 傘表皮の構造を確認しようとして愕然とした。持ち帰ったきのこの傘表皮を切り出すと、切片の表皮側が胞子にまみれている(k)。やや倍率をあげると、傘表皮はどうやら菌糸上の組織が平行に走っているらしいことがわかる(l)。しかし、厚い胞子の層が観察の邪魔をする。
 このきのこは、樹木の腐った部分に、縦に束生して発生していた。こんな場合、たいてい上側のきのこの胞子が下のきのこの傘の上に厚く積もってしまう。だから、束生しているきのこで、傘表皮の構造を確認したければ、かならず最上部に位置するきのこを持ち帰る必要がある
 今回は、悪いことに、最上部にあった子実体は下に落ち、胞子にまみれていた。持ち帰ったサンプルでは、すべての個体の傘表皮に厚く胞子が層をなしていた。水で傘表皮を洗ってみたが、それでも傘の胞子は落ちず、逆に表皮組織が傷んで変形してしまった。


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