2007年5月1日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 4月29日に日光から帰る途中、パーキングエリアでハイゴケの中に小さなきのこが散生しているのに気づいた。傘径は6〜8mm、外見からは、以前同じ場所でしばしばみかけてきたヒメコガサフユノコガサ同様にGalerina(ケコガサタケ属)だろうと思い、念のために持ち帰った。
 帰宅後に直ちに採取した胞子紋の色は黄褐色〜褐色だった。この時点までフユノコガサの可能性が高いと思っていた。胞子を顕微鏡でみると、表面に疣がない(b)。さらに3%KOHで封入すると赤褐色味が強くなり、発芽孔がさらに明瞭になった(c)。胞子盤の有無はいまひとつはっきりわからない。しかし、この時点で、ケコガサタケ属の線は消えた。
 次にヒダを切り出した(d)。側シスチジアがないことはわかるが、多数の胞子に紛れて縁シスチジアの有無や形態がよく分からない(d)。倍率を上げてみると、どうやら縁シスチジアの先端らしきものが見える(e)。そこで、カバーグラスを軽く押し潰してシスチジアを飛び出させた(f, g)。担子器を見ても同定には役立たないと思われたが、念のために形状を確認してみた(h)。

 先端に虫ピンのような丸みをもったフラスコ型の縁シスチジアを持つ種はそう多くはない。確かにフユノコガサのシスチジアもよく似ているが、フラスコ部分が全体にもう少し細長い。小形で脆く外見が似ていて、同様の縁シスチジアを持ったきのこといえば、Conocybe(コガサタケ属)しかない。そこでコガサタケ属の検索表をたどると、コガサタケ亜属らしい。
 以前(2004年5月12日)、コガサタケと同定したキノコ(j)の胞子(k)、縁シスチジア(l)を一緒に並べてみた。柄シスチジアは球頭をもっている。今回採取の標本では、柄シスチジアはあるが、球形の頭部をもたない(i)。そこでコガサタケ節ではなく、ハタケコガサ節となる。保育社『原色日本新菌類図鑑』でたどり着けるのは、ここまでである。

 すでに名の付いたきのこなのか、あるいは新産種なのか、新種なのかを知ろうとすれば、さらにいくつもの文献にあたる必要がある。まずは、国内の図鑑、ついで海外の図鑑、そのあと、国内外の論文などを調べれば、種名にたどり着けるかもしれない。
 標本は持ち帰った時点で、すでに縮まってすっかりクシャクシャになっていた。いつものとおり、コガサタケ属とまで判明すれば充分だ。したがって、これ以上の追究は放棄して、検鏡が終わった標本は、そのまま屋外の日影の裸地に捨てた。


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