2007年5月9日(水)
 
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 5月5日に、福島県いわき市の夏井川に注ぐ支流に沿った林道脇で、カンムリタケ(広義)が流れのよどんだ小さな流れに群生していた。改めて、胞子サイズなどを計測してみた。
 カンムリタケという和名は小林義雄博士が原色日本菌類図鑑 第七巻で初めて使ったものらしい。そこに記載された胞子サイズは、13-17 x 3-4μm(p.767)。一方、スイスの菌類図鑑Vol1.では、Mitrula paludosa(カンムリタケ)の胞子は、10-15 x 2.5-3μmとある(p.136)。
 「顕微鏡下の素顔」に掲載したカンムリタケの胞子は、概ね上記の範囲に収まっている。しかし、ここで取りあげたものや、これまで各所で出会ったカンムリタケでは、胞子サイズが18-40 x 2.5-4μmと、かなり長い。「顕微鏡下の素顔」掲載の胞子も、ここで取りあげた胞子も、子実体頭部をカバーグラスの上に数時間置いて落下胞子を測定したものだ。
 一方、子嚢に入った胞子や、子嚢が破れて飛び出した胞子を計測すると、長さ13-18μmあたりのものが多い。また、胞子の長さは子実体によるバラツキがとても大きい。子実体によっては、同じ落下胞子でも、川村図鑑やスイス菌類図鑑に記載された数値の範囲に収まる。
 過去何度か同じようなケースに遭遇しているので、今回は5〜6個体から、落下胞子を採取して計測してみた。アルビノらしき個体も見つけたので、この胞子も観察してみた。その結果が上に記した18-40μmだ。胞子の隔壁は持たないものが多かった。
 このカンムリタケは、Mitrula paludosa の変種とするのが妥当なのだろうか。それとも、カンムリタケの胞子にはかなり変異があるのだろうか。ひとつの疑問は、文献にある胞子サイズの数値は、はたして成熟した子実体の落下胞子に基づいて測定されたものなのだろうか。種の原記載は100年以上も前なので、そこまで遡って調べようという気持ちは起きなかった。

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