2008年5月29日(木)
 
微小なMarasmius
 
 5月22日に川越市の保護林で採取した小さな材上生のきのこは、結局胞子紋がほとんど落ちなかった(a)。モリノカレバタケ型をし、比較的強靱で、いったん乾燥した後も濡らすと元に戻り、細くて硬い柄をもつこと等から、ホウライタケ属 Marasmius のきのこだろう。
 ヒダは疎で一個体あたり、12〜14枚ほどしかなく(b, c)、柄は微細な毛で覆われる(d)。小さくて押さえが利かないので、実体鏡の下に練りゴムを置き、そこに柄を取り去ったきのこを、ヒダを上に向けて埋め込んだ。この状態で、カサと一緒にヒダの横断面を切り出した(e, f)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 カサ表皮は、先端がホウキ状に分岐した細胞が子実層状に並び(e, g)、縁シスチジアも似たような形をしている(f, h)。この形態が三次元的なため、どうやってもうまく合焦できない。
 ヒダの一部をつまみ出し、フロキシンで染めてKOHで封入して押し潰した。担子器や特異な形のシスチジアが捉えられた(i, j)。次にカサ表皮部分だけを慎重に剥がして、同様の処理をすると、不定形で先がホウキ状に分かれた細胞が多数みえる(k, l)。

 保育社図鑑にしたがうと、ヒメホウライタケ節 Sect. Marasmius に落ちる。図鑑に記載のヒメホウライタケ M. graminum に似るが、採取サンプルは、襟帯がやや不明瞭で、柄は全体にわたって暗褐色をしている。発生基物も図鑑では「イネ科植物体上」に発生とある。

 微細なきのこの観察や解剖では、練りゴムが威力を発揮することが多い。不安定なきのこの姿勢を保って解剖作業をしたり、コケのを撮影するときなども、とても役にたつ。


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