2008年6月5日(木)
 
難しい横断切片:Hygrocybe
 
 先日三重県で採取したアカヤマタケを顕微鏡で覗いてみた。アカヤマタケ属 Hygrocybe はヒダ切片やカサ表皮の切片を作るのがとても難しい。脆くてとても水っぽいからだ。おまけに、採取からすでに4日経過している。冷蔵庫に保管しておいたのだが、取りだしてみると予想通り、かなり崩れはじめていた。新鮮な状態でもうまくいかないのだから・・・・。なまじ薄く切ると、ヒダが二つに割れて丸まってしまう。仕方なしに、かなり厚めに切ることになった(a)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
 とりあえず、ヒダ実質が並列型であることは何とか分かる(a, b)。ヒダの先端をみても、シスチジアは見あたらない(c)。胞子は結構大きく、非アミロイドだ(d)。カサ表皮は弱いゼラチン質で、菌糸が平行に走っている(e)。担子器は2胞子性で、これまたかなり長い(f)。

 過去に何度もアカヤマタケ属のヒダやらカサの切片作りを試みた。しかし、これまで一度もまともに切り出せたことはない。ウラベニガサ属やヒトヨタケ属の切り出しよりも、ずっと難しいのではないかと感じている。この仲間の切片作りに関しては、青森のS. K. さんの切り出し技術は群を抜いている。薄片切り出し技術と観察能力に関しては、いまだに足元にも及ばない。
 S. K. さんの検鏡写真は、今回展示のものも、非常にすばらしいものだった。このことは、昨年筑波大学でも感じたが、今回三重大学でも痛感した。残念ながら今は、逆立ちをしても、あのような薄くて鮮明なプレパラートを作成することはできそうにない。


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